賃貸管理でよくあるクレーム・トラブル6選
2020.06.25
不動産業界にもタブー行為や禁止行為は存在します。
また、不動産業界は関係する法律も多いだけに、知らないと法律に触れてしまう場合があります。
今回は、今すぐ知っておくべき!不動産業界のタブー行為、違反行為をご紹介します。
不動産業界には3大タブー行為と呼ばれている
・抜き
・飛ばし
・囲い込み
という行為があります。
これら3つを詳しく解説します。
不動産業界における抜き行為とは依頼者である売主・買主・貸主・借主と不動産業者との間に媒介契約が結ばれているにも関わらず、別の不動産業者が「手数料を安くする」「購入者を紹介する」などと誘い依頼者と新たに契約を結ぶ行為です。
要するに契約が決まった他社のお客様にアプローチをかけることを言います。
契約者からすれば二重契約となる場合や、先に依頼した不動産業者との契約を破棄し後から来た不動産業者との契約を進めることとなります。
これはお客様を「引き抜く」行為となり業界ではタブーとされています。
この抜き行為は、法律上の違反とはなりませんが、してもいいという法律もありません。
法律に触れなくても、民事として損害賠償請求や名誉毀損などの対象となる可能性はあります。
不動産業者同士のマナーとして抜き行為はやめましょう。
飛ばしとは不動産業界で複数の意味で使われます。
一つ目は「お客様だけで物件に行かせること」
不動産業者の同伴なしにお客様を物件へ飛ばすことから「飛ばし」と言われます。
勝手に物件を見て、勝手に決めてもらって、手数料はきっちり頂く。
この飛ばし行為はトラブルに発展しやすく、良い行為とはされません。
もう一つは「不動産仲介業者を飛ばす」意味として使用されます。
【飛ばし行為の例】
①A社へ行き物件を紹介してもらい、その後B社へ行き同様の物件を契約する
②A社へ行き物件の内見をし、その後B社へ行き同様の物件を契約
など、初めに物件を紹介してもらった仲介業者から情報を得て、他の不動産業者へ依頼したり直接売主に交渉しにいくこと「飛ばし」行為と言います。
直接、売主に契約をして仲介手数料の支払いを免れようとする事を「飛ばし」や「仲介業者飛ばし」などと言われています。
お客様から不動産売却の依頼をうけた不動産会社は、その物件を自社だけで販売せず、不動産業界全体で情報を共有し、多くの会社で販売できるようにしなくてはなりません。
売却の委任契約を受けた不動産会社が、故意に情報を隠したり独占することは法律で禁じられています。
媒介契約を受けた場合、決められた期間内に「物件情報を指定流通機構(レインズ)へ登録する事」が義務付けられています。
しかし、売主から売却依頼を受けた不動産屋さんが、自分で買主を見つけたいがために、他社の不動産屋に物件を紹介しない「物件の囲い込み」が行われていることも事実です。
この囲い込みはレインズへ登録はするが、他社へは紹介しないことを指します。
つまり、別エリアの他社の不動産会社から「〇〇物件を案内させて欲しい」という依頼があっても、「申し込みが入った」と嘘をつき他社への紹介を断るのです。
売却物件の仲介を依頼された不動産会社は仲介手数料が収入源です。
その手数料を売主と買主の双方からもらうために不動産会社が売却物件を自社で抱え込み、他社には紹介しないという「囲い込み」は売主に対する裏切りの行為となります。
不動産業界で起こりやすい違反行為にはどのようなものがあるのでしょうか。
もしかすると、意図していないのにも関わらず違反行為となっている場合もありますので、注意が必要です。
不動産業者には守秘義務があります。
不動産業者が扱っている個人情報は、住所や電話番号など個人の生活実態や住居を特定できるものです。
顧客の住所や電話番号が外部に流出することで、ストーカーなどの深刻な被害に繋がる可能性があるため、個人情報の取り扱いには慎重を期す必要があります。
例え知り合いであっても絶対に顧客の情報を漏らしてはいけません。
SNSで呟く行為も禁止されています。
不動産業者が顧客と契約を結ぶ際は、締結前に「重要事項の説明」が義務付けられています。
「重要事項の説明」は、たとえ顧客が望まなくても説明を省いてはならないのです。
不動産の取引には、大きな金額が動き、複雑な法律上の手続きも伴います。
重要事項説明は、買主・借主が購入や賃借の前に宅地建物とその取引条件に関する重要事項を理解し、十分な情報を得た上で購入や賃借をするかどうかを判断できるようにするための説明です。
2017年10月1日より、賃貸借契約に関する取引に限定してIT重説が可能となりました。
IT重説とは、テレビ会議などのITを活用して行う、賃貸借契約における重要事項説明を指します。
従来は宅地建物取引士自らが対面で説明を行わなければいけませんでしたが、対面と同様に説明や質疑応答が行える双方向性のある環境であれば、自宅などにいながらパソコンなどで重要事項説明を受けられるようになりました。
重要事項説明では、説明すべき事項は複雑多岐にわたり、口頭で理解してもらえる内容ではありません。
そこで、いかなる重要事項説明においても、書面を交付して説明することが法律上の義務とされています。
不動産取引で重要な書類である重要事項説明書の作成は宅建士以外でも行えます。
しかし、実際に重要事項説明を行う行為は宅地建物取引士(宅建士)である必要があります。
これを破ると、宅建業法違反となり個人でなく、会社全体の違反行為となります。
不動産会社で働く社員の必須資格である宅建士。
不動産事務所では「業務に従事する者」5人につき1人以上の割合で、専任の宅地建物取引士を設置することが義務付けられています。
忙しい日々に追われながら宅建士合格を目指して勉強している方も多いのではないでしょうか。
コロナ禍ということもあり宅建講座に通うことすら難しいですね。
今、需要が伸びているのが「宅建士」の通信講座をスマホで受講できる不動産テック「受かっちゃえ宅建」です。
宅建士の試験合格率は15%前後と決して簡単ではありませんが、今後需要の増す資格の一つですので挑戦してはいかがでしょうか。
関連記事:宅建の5点免除とは?5点免除を受けるための方法・メリット・デメリットとは
おとり広告とは、顧客を集めたり、手持ち物件を売るために、売る意思のない条件のよい客寄せ用の物件等の広告を指します。
要するに、既に募集が終了している物件や架空の物件をインターネット上に出して客を引く悪徳不動産屋の広告です。
この行為は、宅地建物取引業法32条に違反し、不動産の表示に関する公正競争規約21条で禁止されています。
【おとり広告の例】
・実在しない架空物件
・実在はするが売却済みの物件
・オーナーから売却依頼のない物件の広告
これら、おとり広告は主に集客に使われ、接客時に他で成約してしまった等を理由に他の物件に誘導するなどの例が多く挙げられています。
また、インターネット広告において、成約済み物件を広告の更新予定日を過ぎても削除せず、サイト上に掲載し続けることもおとり広告としてみなされることになります。
電柱にくくり付けられた捨て看板や、同じく電柱に貼られたチラシ(電ビラ)などによる不動産広告は相変わらず多く、よく目にすることもあるでしょう。
このような「許可なく貼られたチラシ広告」を捨て看板・電ビラと言います。
捨て看板・電ビラは、軽犯罪法、道路交通法、それぞれの自治体が定める屋外広告物条例などに違反するほか、自治体によっては景観条例、迷惑防止条例などにも抵触する場合があります。
捨て看板・電ビラを取り付けるところを警察官に目撃されれば現行犯として捕まることになるため、チラシ自体に会社名は表示せず、携帯電話番号のみを記載するケースが多いのです。
東京都が毎年秋に実施している「捨て看板等の共同除却キャンペーン」では、除却された違反広告物の大半を不動産業が占めています。
いかに、捨て看板・電ビラの違反行為が多いか一目瞭然ですね。
不動産業界は決まり事や法律が多く存在します。
特に、重要事項説明には明確なルール・義務が存在し、かつ説明必須の内容も多いので意図せず違反してしまう人がいます。
故意であってもなくても違反は違反なので、会社が指導や罰則を受ける場合があります。
こうした違反行為・禁止行為を繰り返すことでトラブルの元となりお客様の信用だけでなく、他社からの信頼もなくなりますので絶対に止めましょう。
〈参考〉
TATSUJIN JOURNAL:事故物件の告知に判断基準|人の死の告知に関するガイドライン
TATSUJIN JOURNAL:してはいけない!不動産業界のタブーや違反行為
イエフリコラム:不動産業界のタブーである「囲い込み」「売り止め」とレインズ(物件データベース)について
コンシスト:不動産業のコンプライアンスとは?具体的な違反内容を徹底解説!