賃貸管理でよくあるクレーム・トラブル6選
2020.06.25
賃貸住宅管理業法が施行されてから、賃貸管理会社がマスターリース契約を行う際に、オーナーに宛てた定期報告が義務化しました。
そして、その定期報告の業務を行うにあたり、賃貸管理会社の業務が増え、大きな負担となり、困っている、問題となっている会社が増えています。
そこで、この記事では、賃貸住宅管理業法の「定期報告」について、負担となる要因や改善策について考察し、解説していきます。
賃貸住宅管理業法による定期報告は、賃貸管理会社がオーナーに対して定期的に報告書を作成して提出することを指します。
この報告書には、物件の状態や収支情報、入居者の状況などが含まれます。
定期報告は、オーナーに賃貸物件の状況を把握させるために行われる重要な業務です。
以下の項目で詳しく見てみましょう。
「賃貸住宅管理業法」とは、賃貸住宅の管理業の業務(特にサブリースの業務)が、適正に運営される事を守るために作られた法律です。
これを詳しく見ると、この法律の中身には
⑴賃貸住宅管理業に係る登録制度(令和3年6月15日施行)
⑵特定賃貸借契約(サブリース契約)の適正化に係る措置等(令和2年12月15日施行)
の2つの創設があります。
この「賃貸住宅管理業法」について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
▼参考となる記事
賃貸住宅管理業法では、以下のことが義務付けられました。
・オーナー様への定期報告
・業務管理者の配置
・オーナーへの重要事項説明と契約締結時の書面の交付
・財産の分別管理
・賃貸住宅管理業の登録
次の項目で、この上記の義務つけられた業務のうち、今回のテーマである「オーナー様への定期報告」について詳しく紹介していきます。
これまでもオーナー様への定期報告は国土交通省から推奨されてきました。
それがこの度、賃貸住宅管理業法の施行により、定期報告は義務化となりました。
これまで、賃貸管理会社として、オーナー様へ定期報告は行っていたとしても、内容がまとめられていなかったり、少ない頻度であったりと、会社によっては不十分なケースが多かったという背景があったため、この法律により、定期報告の頻度と内容が規定され義務化されたことになります。
賃貸住宅管理業法では、管理業者からオーナー様への定期報告は「最低年一回以上、書面による報告」という事が義務付けられました。
・賃貸住宅管理業法第二十条
「賃貸住宅管理業者」は「定期的に、委託者に報告しなければならない。」と規定されています。
ここでいう賃貸住宅管理業者は管理会社様、委託者とはオーナー様のことです。
上記の定期的な報告は、同法施行規則第四十条により以下のように記述されています。
・同法施行規則第四十条
「賃貸住宅管理業者」は「管理受託契約を施行した日から一年を超えない期間ごとに」、「管理業務報告書を作成し、これを委託者に交付」する。
つまり最低年一回以上の報告が必要になります。また、書面での報告が必要になります。
参考として、国土交通省から発行されている「賃貸住宅管理業法に関する主な論点」という資料があります。その中に、この定期報告についての概要が掲載されています。
これまで随時、口頭で報告を行ってきた管理会社としては、報告の手順や作成方法を見直す必要が出てきました。
また頻度も上がったために、物理的な業務量が増えました。
前述しましたが、賃貸住宅管理業法第二十条における定期報告のポイントは以下の3つです。
・入出金管理や収支情報
・建物の状態やメンテナンスの状況
・入居者の状況や受けている苦情など
つまり、上記3つの事に関する報告を最低年に1回実施する、ということです。
それでは、以下の項目で、実際どのような負担があるのか、見てみましょう。
この報告書には、上記に挙げた3つの報告があります。
その報告を行うためには、以下のような業務が伴います。
・状況の調査
・調査報告をまとめるための資料作成、文書作成
・実際に報告するための面談など
定期報告は、オーナーに賃貸物件の状況を把握させるために行われる重要な業務です。
そのために、業務の負担が増え、報告の頻度により時間や手間の負担が増えることになります。
定期報告は正確かつ詳細な情報を含む必要があります。
報告書の作成にはプロフェッショナルな文書作成能力や、専門的なスキルが求められます。
しかしながら、そもそも日頃の業務タスクも多く、業務の内容も多岐にわたる為、賃貸管理会社のスタッフにとっては、この文書の作成は大変に負担が大きい作業となります。
特に、報告内容の元となる、点検、清掃、様々な業者からの、Fax、メール、媒体も書式もバラバラの報告があるのを、オーナー様への報告として1つの資料に取りまとめるためには、「さて、どのように取りまとめていけばよいのか」と言うことが、最大の負担になると考えられます。
以下に述べるように、報告頻度が増え、報告の内容も変わった事も、大きな負担となっています。
・頻度について
定期報告の頻度や内容は、地域によって異なる規定があるため、その遵守には注意が必要です。
賃貸住宅管理業法施行規則40条1項に、「1年を超えない期間ごとに」行わなければならないとされているので、最低でも年1回、行わなければならないこととなります。
・報告内容の多様性について
報告内容は、これまで国土交通省により推奨されて行なってきたものには、
・入居の状況
・解約状況
・家賃回収の状況
が主だったものでした。
ところが、これまで当然に行なってきた上記のような内容は、新しく出来た制度の中の定期報告には含まれておらず、新しく報告の義務となった、
・入出金管理や収支情報
・建物の状態やメンテナンスの状況
・入居者の状況や受けている苦情など
の3点となりました。
この内、特に建物メンテナンスに関して、あまり積極的に取り組んでいない管理会社も多かったと考えられています。
つまり、清掃や修繕に関しては、管理会社を通していなかったケースが多いとされています。
では、建物メンテナンスはどのように行われているかと言うと
・建物を建てた会社がメンテナンス契約をしていた
・オーナー自ら清掃会社と契約している
・オーナーとの直接的な契約で、近所の方や、親戚の方がパートやアルバイトで清掃を行なっている
という状況が多くあります。
そこで、建物のメンテナンス状況に関して、報告をまとめることに困難している管理会社が多いと考えられます。
定期報告の義務化により、負担がかかっている会社にとって、次のような改善策があります。
デジタルテクノロジーを活用して、定期報告業務を自動化することが有効です。
委託している、下請けの清掃会社や、メンテナンスを担っている会社から、クラウドシステムを通じて業務の報告がされ、その報告を元に、報告書のテンプレートやデータベースが作成されるという、自動化できるテクノロジーが生まれています。
例えば、クラウドシステムに『定期報告』機能を設け、保有物件ごとに、定期報告のサマリーと詳細が自動的に確認できる機能を備えるなどがあります。
物件管理を行う下請け業者から、クラウドを通じて定期清掃などの現場作業や、清掃点検などの報告書が更新され、これが報告書の作成に自動的に反映されるようなシステムが現れています。
デフォルトでオーナー向け報告書の形式になっているので、業者が必要事項をうめていくだけで、簡単にオーナー向け報告書ができあがります。
システムによっては、クレーム報告を行う機能もあるため、苦情対応も可能なものもあります。
このような自動化ツールを活用できれば、情報の入力や集計を効率化でき、業務の時間と手間をかなり削減することができます。
一定の要件を満たす場合は、定期報告をWebやメール等の方法ですることが認められています。
上記のような自動化システムと連動させる形で、Web上にオーナーへの情報提供サイトを設けたり、メールを自動配信することによって、定期報告義務に対処することができます。
そのためには
・Webでの定期報告をオーナーに承諾してもらう
・オーナーがWebでの定期報告をダウンロードして、内容を確認したと言う証拠をもらう(Web上の通知を受ける方法など)
必要があります。
この2点が要件となりますが、この要件を満たすための、システムの構築も必要となります。
定期報告業務を外部の専門業者に委託することで、負担を軽減することができます。
報告書の作成や情報の収集などを専門家に委ねることで、賃貸管理会社のスタッフはより効率的な業務に集中することができます。
実際、新しく義務化された、定期報告の書類作成を専門的に請け負う会社が増えています。
そのような会社に、外注することで、業務負担が増えた分の社員を雇うより経費が安く済むことが考えられ、また、今いる社員が負担が大きすぎて離職に繋がるようなケースも減らすことができます。
また、将来的にはコールセンターと連携して自動的に受電記録がデータに反映されたり、自動化された定期報告をもとに、修繕計画提案などが行われるようなサービスも増えていくだろうと考えられています。
▼アウトソーシングに関する参考記事
定期報告業務に関する専属のスタッフがいる会社もいます。
正社員が請け負う場合もありますし、パート社員が専門的にこの業務にあたる場合もあります。
このような、定期報告専門のスタッフには、教育とトレーニングを行うことで、スタッフのスキル向上と負担軽減につなげることができます。
文書作成能力や報告書の作成方法、効果的な情報収集方法などについてのトレーニングを実施し、効率的な業務遂行を促進します。
賃貸住宅管理業法における定期報告により、
・賃貸管理会社に、どのような負担がかかっているか
・どのような解決策があるか
を解説させていただきました。
賃貸住宅管理業法における定期報告は、賃貸管理会社にとって重要な業務ですが、その負担は避けられません。
ですが、今回ご紹介させていただいた、自動化ツールの活用やアウトソーシングなどの改善策を取ることで、負担を軽減することができます。
また、スタッフの教育とトレーニングを通じて業務の効率化を図ることが重要です。
定期報告業務の改善に取り組むことで、賃貸管理会社はより効率的かつスムーズな運営を実現できるでしょう。
また、この制度の施行により負担を請け負うだけでなく、「不動産会社のビジネス領域を広げよう」と前向きにとらえる事で、実際にビジネスを広げ収益化を図る会社も増えています。
例えば、日管協も2023年2月より「賃貸住宅メンテナンス主任者」の資格を創設しました。
こうした資格も活用して、ぜひこのような制度の施行を前向きにとらえ、定期報告から修繕提案につなげられるような体制づくりや、新規事業を生み出すきっかけになると良いでしょう。
▼”賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度”ってなに?
▼【2023春・最新】不動産会社における事業拡大のための新規事業の作り方
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