賃貸管理でよくあるクレーム・トラブル6選
2020.06.25
賃貸住宅管理のサブリース契約について、詳しく解説させていただきます。
・なぜサブリース契約は問題になりやすいのか。
・実際にどのような問題が起こるのか。
・サブリース契約に係るトラブルを起こさないようにするための法律「賃貸住宅管理業法」を考えるにあたって、そもそもサブリース契約とは何か
という疑問を持っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
また、サブリース契約のことを知ろうとすると、よく聞く「マスターリース契約」がありますが、どのように区別するのか、に疑問を持つ方がいるでしょう。
今回の記事では、
・サブリース契約とは何か
・マスターリース契約との区別
・サブリース契約がなぜトラブルになるのか
・賃貸管理会社としてサブリース契約がうまく行くために行うべきこと
について、わかりやすく解説させていただきます。
サブリース契約について解説する前に、今回の記事では、まず初めに、「賃貸住宅管理業法」について記述させていただきます。
サブリース契約について考えるために、大切な法律であるためです。
賃貸住宅管理業法の正式名は「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」と言います。
不動産を所有するオーナーが、物件の管理を自己管理せず、賃貸管理会社に管理を任せるケースが増えてきました。
ところが、管理形態の1つである「サブリース契約」を行なった際に、トラブルが発生することが増え、このトラブルが社会問題化した時期がありました。
一部のサブリース業者と不動産を所有するオーナーとの間で契約トラブルが相次ぎ「サブリース問題」と呼ばれるようになったのです。
これは、サブリース業者を監督する法律や制度が明文化されていなかったのが大きな要因でした。
そのために、悪質な不動産業者や、問題のある契約が増えてしまったため、トラブルが頻発しました。
そこで、この問題が起こらないようにするために、賃貸住宅管理業法が生まれました。
この法律が生まれたことにより、不動産賃貸物件を所有するオーナーも、真面目に賃貸管理を行う会社(サブリース業を行う会社)も、それぞれが安心して契約できる土台ができた事になります。
不動産の賃貸物件を所有するオーナーと、不動産の賃貸物件を管理するサブリース業者との間にある、賃貸借契約を適正化するために
・その措置を設ける
・賃貸住宅管理業を営む者に係る登録制度を設ける
ことを施行した法律が、この賃貸住宅管理業法です。
賃貸住宅の管理業の業務(特にサブリースの業務)が、適正に運営される事を守るために作られた法律です。
これを詳しく見ると、この法律の中身には
⑴賃貸住宅管理業に係る登録制度(令和3年6月15日施行)
⑵特定賃貸借契約(サブリース契約)の適正化に係る措置等(令和2年12月15日施行)
の2つの創設があります。
※この2つに関して次の項「法律の概要」で解説しています。
賃貸不動産経営管理士協議会では、この法律について、以下のように説明しています。
「賃貸住宅管理業がオーナー・入居者から一層の信頼を受け、国民生活の安定向上に不可欠な事業として健全に発展し、国として良好な居住環境を備えた賃貸住宅の確保等を図ることを目的としています。」
つまり、わかりやすく説明すると、この法律が施行されたことにより、
・不動産賃貸物件を所有するオーナーが、悪質な管理会社との契約によりトラブルや被害が起こらなくなる
・不動産賃貸管理業を営む管理会社が正当な業務を行えば、不動産賃貸物件を所有するオーナーから信頼を受ける
ということに繋がることになります。
賃貸住宅管理業法の概要に関しては以下の記事をご覧ください。
▼賃貸住宅管理業法の概要(参考記事)
また、「賃貸不動産経営管理士」の公式サイト内に賃貸住宅管理業法に関する詳細があります。
▼「賃貸不動産経営管理士」の公式サイト
このサブリース契約における社会問題化を解決するために「賃貸住宅管理業法」が改正されましたが、この法律が施行されてから以降は、賃貸管理会社は、定期報告などの業務が増え、てんてこまいになっているのも実情です。
業務的に、人員確保や、時間の確保のために業務にしわ寄せが起きているという会社は少なくはありません。
この解決策として、業務のアウトソースをお勧めする関連記事があるので、参考にしてください。
▼アウトソースに関する記事(参考記事)
不動産オーナーが賃貸物件を所有して、その物件を管理していく際に、賃貸管理会社に委託することが一般的になってきています。
この時、物件の管理には大きく3種類の契約方式があります。
①サブリース契約
②管理委託契約
③自主管理・自己管理
このうち③自主管理・自己管理とは不動産オーナーが自分で物件の管理や入居者募集、対応を行なっている形態です。近年では、この自主管理を行うオーナーは減ってきています。
この次の項目で、①サブリース契約について詳しく見ていきます。
上に挙げた、「①サブリース契約」と「②管理委託方式」の違いについて見てみましょう。
サブリース契約と管理委託契約との違い
サブリース契約のメリットは、空室リスクを気にする必要がなくなることです。賃貸物件の管理や入居者管理を一括してサブリースにすることで、物件の空室があっても、一定の収入を得ることができます。
管理委託の契約の場合は、賃貸物件の管理や入居者の募集を任せられるというメリットは大きいものの、空室がある場合にその物件の賃料は入ってきません。
両者の違いには、契約料の違いが大きく関わってきます。
サブリース契約とは
サブリース契約とは、賃貸マンション経営において「サブリース会社(不動産賃貸管理会社)」が「オーナー」から全戸を借り上げ、居住者に「転貸」することです。
わかりやすく言えば「また貸し」の契約となります。
賃料は「サブリース会社(不動産賃貸管理会社)」が「オーナー」に対して支払い、居住者は「サブリース会社(不動産賃貸管理会社)」に対して家賃を払うというシステムです。
この方式は大手の不動産会社が導入し、日本全国へと広がっています。
※上記の図にある「マスターリース契約」については、次の項目「マスターリース契約と区別する」で解説しています。
オーナーにとってのメリットは、このサブリース契約を利用すれば、賃貸物件に空室があったとしても、契約している条件によりますが(例:入居者に求める賃料のうち90%の賃料を受け取る契約など)、毎月一定額の賃料が支払われるという点です。
サブリース会社も、不動産オーナーに対して「賃料補償をしますよ」という形で営業しますが、実際のところは、サブリース会社はオーナーから物件を賃貸物件として「一括借り上げ」をしていると言うことになります。
サブリース会社に支払う賃貸管理陵は発生しているものの、空室により賃料が入らない物件や月が出てくると思えば、安定した管理を得られると判断して、サブリース契約を選択するオーナーも少なくはありません。
トラブルの元になったり、サブリース契約にデメリットがあるとすれば、
・解約時に「借地借家法」が適用され、簡単に解約できない
・賃料がサブリース会社により勝手に変更される
・入居者を選ぶことができない
という点があります。
この事に関しては、契約時の契約内容の確認や、専門家への相談が必要です。
※「サブリース問題」として一時期トラブルが頻発したという事は前述しましたが、もちろん、悪徳な商法ばかりが広まったばかりではありません。正当な賃貸管理の契約として、この方式を採用している会社は多くあります。
管理委託契約とは
管理委託会社は、「賃貸マンションに発生するさまざまな管理業務を委託する会社」です。
オーナーが所有する物件の管理を考える時、自主管理や自己管理は難しい場合に、賃貸管理業務を請け負う管理委託会社と契約を結び、管理を任せます。
単に、入居者の募集や管理を行うだけでなく、日々発生する様々なトラブルや苦情にも対応します。
また空室対策の、物件の管理から、対策までも検討して対応します。
これらの物件の管理を、対応のプロの力を借りる事は近年では一般的になってきています。
オーナーの家賃収入から一定分を「管理委託費」として、管理委託会社に支払い、管理全般を任せる方式です。
サブリース契約と比べれば、契約料は一般的に安くなりますが、空室である物件からの家賃収入が見込めないことがデメリットとなります。
賃貸住宅管理業法が生まれた背景として、サブリース契約のトラブルが頻発したためという事は前述した通りですが、この項目の内容を理解していただければ、実際のところは「マスターリース契約」でのトラブルが多かったのだ、という事がわかるでしょう。
つまり、正確には、サブリース契約のトラブルと認識されている部分は「マスターリース契約」のトラブルだと言うことができます。
それでは、サブリース契約とマスターリース契約との区別について解説します。
もう一度、この↑図を再びご覧ください。
<マスターリース契約とは>
サブリース業について、解説させていただきます。
①サブリース業者は、オーナーから、不動産賃貸物件を「一括借り上げ」で、賃貸物件丸ごとを借りる賃貸契約を結びます。この契約のことを「マスターリース契約」と呼びます。
↓
②サブリース業者は、入居者を探し、その入居者と賃貸契約を結びます。いわゆる通常の賃貸契約です。
↓
③入居者は、サブリース業者に賃料を支払います。例として10万円の賃料を支払うとします。
↓
④サブリース業者は、オーナーに賃料を支払います。契約時に90%を支払うとしていれば、このケースの場合はオーナーに9万円を支払うことになります。(※サブリース契約の場合は、入居者が退去して空室になっている場合も9万円はオーナーに支払われます)
<サブリース業とは>
よって、この上記①〜④の契約上の流れ全てを総称して「サブリース業」と呼ぶことになります。
サブリース業者とオーナー間の契約のことは、「マスターリース契約」と呼びます。
この言葉の区別は重要です。
<契約の関係性での呼び方>
また、それぞれの契約上の関係性において、正しい呼び方を知っている事も重要です。
◆「不動産を所有するオーナー」と「サブリース業者」との関係性では
・「不動産を所有するオーナー」=賃貸人
・「サブリース業者」=賃借人
◆「サブリース業者」と「入居者」との関係性では
・「サブリース業者」=賃貸人
・「入居者」=賃借人
この関係性や呼び方が理解できると、サブリース業の意味がわかりやすくなり、どのようなトラブルに発展しやすいのか、についても理解が深まります。
この↑図を再びご覧ください。
専門用語についての確認をしていきましょう。
<契約の用語>
◆「不動産を所有するオーナー」と「サブリース業者」との間の契約のことを
・宅建士(宅地住宅建物取引士)の試験では「賃貸借契約」と呼びます。
・賃貸不動産経営管理士の中では「マスターリース契約」と呼びます。
※注意 実務上ではこの契約を「マスターリース契約」と呼びます。
◆「サブリース業者」と「入居者」との間の契約のことを
・宅建士(宅地住宅建物取引士)の試験では「転貸借契約」と呼びます。
・賃貸不動産経営管理士の中では「サブリース契約」と呼びます。
※注意 実務上ではこの契約を「マスターリース契約」と呼びます。
少し混乱があるかもしれませんが、この呼び方や、言い表し方の認識が必要です。
単に言葉の違いかもしれませんが、この区別が明確でないと、契約の仕組みや違いがわからず混乱となり、実際の契約の確認の際にトラブルを招き兼ねません。
サブリース業で起こりやすいトラブルは、上記で解説したように「マスターリース契約」の契約上で起こると言えます。
ではどのようなトラブルが起こりやすいのでしょうか。
事例を2つ挙げます。
物件に空室が出た場合、サブリース業者は、入居者からの賃料が入らないのに、オーナーに「賃料保証」と言う形の、契約通りの賃料を支払う必要があります。
しかし、これが数ヶ月も続くと、サブリース業者は赤字となってしまうため、補償額の値下げ交渉をされるケースがあります。
この時、当初の契約において、サブリース業者が「賃料保証」「家賃保証」という言葉を使うことがあり、そのためオーナーにとってみると、同じ家賃が保証され続けるように受け止めるのが一般的ですが、実際の「マスターリース契約」においては、これが覆されるケースがあるという事です。
サブリース業者がオーナーと契約(マスターリース契約)を行う際に、数年ごとにサブリース賃料の見直しがあることを、契約内容に定めていることが一般的です。よって、市場ニーズに応じて、家賃の減額の提案をされるリスクがあります。
新しい賃貸住宅管理業法においては、サブリース業者に対して、紛らわしさを生み出す「保証」という言葉を使わないようにという指導が設けられています。
また、マスターリース契約を解除する際に、違約金や解約金が必要となるケースもあります。このことは、契約時に、双方で念入りな確認が必要となります。
補償額が下がり、さらに解除ができないとなると、オーナーは困ってしまいます。
サブリース業者は、このようなケースでは「借地借家法」の権利があると主張して、つまりアパートの住人と同じ権利があると言い、解約を拒みます。
サブリース業者は、オーナーとのマスターリース契約において、契約的には賃借人であるため、借地借家法28条により解約ができない事を主張します。
<他にも様々なトラブルが引き起こされる可能性がある>
・賃貸管理料を支払っているにも関わらず、適正な管理業務が行われなかった
・強引なサブリース契約の営業や勧誘により、オーナーが困ってしまう。
・契約期間中のサブリース業者の倒産によって、家賃未払いが発生
などが実際に起こるトラブルの事例です。
賃貸住宅管理業法が施行された背景を考えると、サブリース会社の業務が粗悪だという印象を受けかねません。
しかしながら、オーナーにより信頼を受けて誠意のこもったサブリース業を行う会社は、当然の事ながら数多くありますし、賃貸物件を預かる業務として正当であり重要な仕事になります。
もちろん、十分な配慮がないと、このサブリース業もトラブルを生み出しやすい環境にあるという事が言えます。そこで、この賃貸住宅管理業法をの法律を十分に理解して、管理業務を行う必要があります。
特にポイントを置く点について解説します。
サブリース業を行う賃貸管理会社は、不動産オーナーと誠実な契約を結ぶ必要があります。
その際は、事業計画や提案内容の正確性が求められます。
そして、そもそも、会社に備わるリサーチ力や分析力がある事が、誠実な契約の大前提となります。
オーナーが、サブリース業者を選ぶ場合も、当然ながら信頼のある会社を選びます。
信頼がある会社とは、第一に会社の経営状態の安定を求められるでしょう。
賃貸管理の過去の実績も見られますし、現状での修繕の実施の状況や、具体的には連絡の取りやすさなども選ばれるサブリース業者になるための大切なポイントです。
また、サブリース業者が、不動産のオーナーとマスターリース契約を行う際は、様々な契約の形があります。その形によっても、信頼や反響が変わってきます。
マスターリース契約と合わせて、プロバティ契約を結ぶケースもあります。このことは賃貸物件の運営を効率化させる事ができます。
誠実な会社であることを証明できるものとして、賃貸住宅管理業法の施行があります。
賃貸管理業登録を行い、業務管理者を配置します。
そして、定期報告を行うなどの業務を遂行していてこそ、信頼のあるサブリース業を行う誠実な会社だと認められることになります。
賃貸住宅管理業法の施行により、サブリース業者への法的規制が強化された中に、重要事項説明を行う事は重要視されています。
ここで、サブリース業に関する重要事項には、「サブリース住宅原賃貸借標準契約書」が使用されます。
サブリース業者が、適正なサブリース契約・業務を遂行するために、この重要事項説明が適切に行われることはもちろん、オーナー側も、契約内容を細部まで確認し、お互いに誤解とトラブルのないマスターリース契約を結ぶことが大切です。
賃貸住宅管理業法には、定期報告が義務付けられています。
そもそも、この義務を果たさないことには、サブリース業の信頼を受けることにはなりません。
定期報告を行うことは、サブリース業の信頼を得るために必須となります。
しかしながら、業務が多岐に渡り、尚且つ人手不足に悩む不動産会社においては、この定期報告の業務の負担に対して、悩みが大きいという状況が浮かび上がっています。
▼定期報告をスムーズに行うためのコツに関して、こちらの記事を参考にしてください。
不動産の賃貸管理において、サブリース契約について、詳しくわかりやすく解説させていただきました。
マスターリース契約という言葉との区別をしっかり把握することが必要です。
また、賃貸住宅管理業法の施行により、このサブリース契約についての細かな決まり事があることの理解も必要でしょう。
賃貸住宅管理業法の法律の概要通り、誠実な対応をすることがで、サブリース契約を、不動産オーナーに十分に活用してもらうことができます。
この記事を、サブリース契約についての理解と、活用にお役立てください。
▶︎賃貸管理を任せられる管理会社のノウハウが詰まっています。参考にしてください!
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