新型コロナ|緊急事態宣言を鑑みた3つの対応と不動産テックの活用
2020.04.11
空き家問題が深刻化する中、自治体が主導する「空き家バンク」は不動産活用の新たな選択肢として注目されています。
本記事では、空き家バンクの基本的な仕組みから、企業が活用する際のメリット・デメリット、活用事例までを詳しく解説します。
空き家バンクとは、地方自治体が運営する、空き家の所有者と利用希望者をマッチングする制度です。
所有者が物件情報を登録し、自治体がその情報を公開することで、移住希望者や企業が空き家を活用できるようになります。
空き家バンクの仕組みと流れ
空き家バンクの利用は、以下のような流れで進みます。
・物件登録: 所有者が自治体に空き家の情報を提供し、登録します。
・情報公開: 自治体がウェブサイトや窓口で物件情報を公開します。
・マッチング: 利用希望者が物件情報を閲覧し、興味のある物件について問い合わせます。
・契約: 所有者と利用希望者が直接交渉し、契約を結びます。
自治体によっては、物件の改修費用に対する補助金や、移住支援金などの制度を設けている場合もあります。
空き家バンクに掲載されている物件は、市場価格よりも大幅に低価格で提供されているケースが多く、なかには「0円物件」と呼ばれる無償提供の案件も存在します。
企業が地方に拠点を設ける際、初期費用を抑えながら物件を確保できるため、新規事業やテストマーケティングにも適しています。
特にスタートアップ企業や中小企業にとっては、コストを抑えた投資が可能な点は大きな魅力です。
空き家バンクは地方自治体が運営しており、登録されている情報は信頼性が高いのが特徴です。
また、自治体によっては、物件の改修費用に対する補助金制度や、移住者・企業誘致に関する各種支援制度も用意されています。
制度の利用に関しても自治体職員がサポートしてくれるため、初めての地域進出でも安心して進めることができます。
企業が空き家を活用することは、地域の課題解決に直接貢献する行動といえます。
空き家の利活用は、地域の景観改善や治安維持、人口流出の抑制にもつながり、結果的に地域経済の活性化を後押しします。
こうした社会的意義のある取り組みは、企業のCSR(企業の社会的責任)活動として評価されるだけでなく、ステークホルダーとの信頼関係構築にも寄与します。
地方での空き家活用によって、企業は「地域とともに歩む企業」というポジションを確立できます。
たとえば、地域資源を活かした製品開発や、住民との協働によるサービス提供は、都市部の競合との差別化につながります。
地域との関係性を活かした発信やストーリーテリングは、メディア露出の機会を増やし、企業ブランディングの強化に大きく貢献します。
空き家バンクに掲載されている情報は、写真や簡易的な概要にとどまることが多く、物件の詳細(構造、耐震性、インフラ状況など)を十分に把握するのが難しい場合があります。
また、情報の更新頻度が低い自治体では、掲載物件が既に成約済みであったり、実際の状態と乖離している可能性も否定できません。
そのため、実際の視察や追加情報の取得が前提となります。
空き家バンクはあくまでマッチングの場であり、実際の契約は物件所有者と利用希望者が直接行います。
特に法人利用の場合、契約条件や責任の所在などを明確にしておく必要がありますが、相手が個人であることも多く、交渉に時間や労力がかかるケースがあります。
法的なトラブルを避けるためにも、リーガルチェックや専門家の介入が望まれます。
空き家バンクの物件は長年放置されていたケースも多く、雨漏り・シロアリ被害・構造の劣化などが発見されることもあります。
見た目ではわからない瑕疵(かし)が存在する可能性があるため、購入前には必ず建築士や不動産業者によるインスペクション(建物調査)を行うべきです。
リフォームや改修にかかる費用も事前に見積もり、投資対効果を慎重に検討する必要があります。
空き家バンクは自治体の地域課題解決の一環として運用されているため、営利目的の不動産サービスとは異なり、積極的な営業活動や広報支援は基本的に行われません。
よって、物件の魅力を把握するためのサポートが乏しい場合や、レスポンスが遅いといった課題も見られます。
企業側で主体的に調査・連絡・確認を行う必要があり、工数の確保が求められます。
テレワークやハイブリッド勤務の普及により、都市部に集中していた業務を地方に分散する企業が増えています。空き家バンクを活用することで、地方に低コストでオフィスを設置でき、災害時のリスク分散にもつながります。
また、地元人材の採用・定着を促進し、地域との関係性を深める契機にもなります。
地元の大学や自治体と連携すれば、インターンシップや共同プロジェクトの場としても有効です。
企業が空き家を社員寮や社宅として活用することで、従業員の住環境を整えつつ、福利厚生の充実を図ることができます。
特に地方移住を希望する社員や、出張・転勤者の短期滞在先としてのニーズに対応可能です。また、従業員の生活コストが抑えられることで、企業全体の人材定着率向上にも寄与します。
空き家リノベーションによる住環境改善は、従業員満足度の向上にもつながります。
地方での新規事業展開を目指す企業にとって、空き家は優れた拠点候補です。
飲食店やカフェ、シェアオフィス、観光案内所、福祉施設など多岐にわたる用途があり、地域住民との接点を持つビジネスに最適です。
さらに、地元雇用の創出や地域経済の活性化にもつながるため、自治体からの支援を受けやすい傾向があります。地域の課題解決型ビジネスとしても注目されています。
空き家を単なる建物としてではなく、地域の文化・歴史・景観を取り込んだ価値ある資源ととらえることで、新たなビジネスチャンスが生まれます。
例えば、築100年以上の古民家を改装した宿泊施設や、郷土料理を提供するレストラン、アートギャラリーや体験型施設としての活用など、地域の魅力を発信する拠点づくりが可能です。
インバウンド需要の取り込みや地域ブランディングにも貢献できます。
1. 契約書の整備・リーガルチェック
空き家バンクはあくまでマッチングサービスであり、実際の売買・賃貸契約は物件所有者と企業の間で直接行う必要があります。
そのため、契約にあたっては必ず契約書を作成し、法的な整合性を確認することが重要です。口頭契約や曖昧な合意に基づく取引は、トラブルの原因となる可能性があります。
特に企業利用では、弁護士や不動産専門家によるリーガルチェックの導入が推奨されます。
2. 物件の現地確認・インスペクション
掲載されている写真や説明文だけでは、実際の物件の状態を正確に把握するのは困難です。
現地視察を行い、建物の老朽化、雨漏り、構造的な欠陥、カビや害虫の被害などを確認することが必須です。
可能であれば、建築士やインスペクターによる建物診断(インスペクション)を依頼し、改修の必要性やコストを見積もった上で検討を進めましょう。
3. 自治体制度の比較・調査
空き家バンクは自治体ごとに運用方法や支援制度が異なります。
ある自治体では補助金が充実していても、別の自治体では支援が限定的ということもあります。
事前に複数の自治体の制度を比較検討し、どの地域が自社にとって最適かを調査することが成功の鍵です。また、支援制度には申請期限や条件があるため、公式ウェブサイトや自治体の担当窓口で最新の情報を確認するようにしましょう。
4. 中長期的な運用計画の策定
空き家活用は一時的なプロジェクトではなく、持続可能な事業としての設計が求められます。
物件を取得・改修して終わりではなく、その後の運営・維持・収益化までを見据えたビジネスモデルを構築しましょう。
例えば、地域住民との連携や、観光・地域資源とのシナジーを生かす仕組みを事前に検討することで、プロジェクトの長期的な成功が期待できます。
空き家バンクは、地域の空き家を再活用するために自治体が提供する公的なマッチング制度であり、企業にとっては新たなビジネスチャンスを切り開く可能性を秘めています。
本記事では、空き家バンクの仕組みやメリット・デメリット、具体的な企業活用法を解説してきました。コストを抑えた物件取得や、地域貢献、ブランド価値の向上といった利点がある一方で、情報の非対称性や老朽化リスクなど、慎重な対応が求められる側面も存在します。
活用に際しては、自治体制度の調査、契約面でのリスク管理、そして中長期的な事業計画の策定が不可欠です。こうした準備を整えた上で取り組めば、空き家バンクは地域と企業が“共創”する場として、大きな価値をもたらすはずです。
空き家バンクの活用を通じて、貴社の地方展開や新規事業の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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