賃貸管理でよくあるクレーム・トラブル6選
2020.06.25
家賃相場や固定資産税の増額などにより家賃を値上げしたい場合、「入居者への通知はいつ・どのように行えばいいのか」
「値上げを拒否されてしまったらどう対処すればいいのか」など、家賃値上げでお悩みではありませんか?
今回は、家賃の値上げ交渉をスムーズに進めるための注意点やコツなどを詳しく解説します。
家賃の値上げや値下げは、「借地借家法」という法律で定められたオーナーの権利です。
「一度入居したら家賃は変更できない」と思っている人も多いですが、正当な理由がある場合に限り、変更することが可能です。
物価や経済状況、周辺環境の変動などにより、家賃の上げ下げを認めなければ環境に合わない不自然な値段がいつまでも適用されることになるかもしれません。
そのため、オーナーには家賃を変更する権利が認められています。
ただし、実際に値上げを適用するには入居者の合意が必要になります。
オーナーが家賃を値上げできる正当な理由として、次の3つが挙げられます。
賃貸物件の家賃相場は、エリアや駅からの距離によって決まります。
周辺の家賃相場より安い家賃を設定している場合は、値上げをしても良いでしょう。
売買契約でオーナーチェンジ物件を手に入れた場合や、相続税対策用の物件を相続した場合などは、家賃が相場より安く設定されている可能性があります。
周辺エリアの相場を調査し、それに合わせて交渉しましょう。
物件の周辺で再開発が進んだり新しく駅ができたり、学校や会社などの人が集まる場所ができたりすると、周辺の家賃相場が上がることがあります。
その場合も家賃を上げる交渉が可能です。
また、物価が上昇した場合も考えられます。
再開発が進んだなどの理由で周辺の地価が上がると、固定資産税評価額も上がります。
それに基づく固定資産税や都市計画税の課税額が上がり、もちろん納税額も大きくなります。
この場合もオーナーの負担が増えるため、家賃値上げの正当な理由になります。
固定資産税は毎年1月1日時点の土地の評価額に応じて課税され、評価額自体は3年に1回見直しが行われます。
この時期には、固定資産税課税通知書をしっかりとチェックしておくことが大事です。
家賃の値上げは確かにオーナーの正当な権利ですが、入居者にとっては毎月の負担が増えることになります。
値上げ交渉をすると、次のようなリスクにつながる場合があります。
家賃を上げると入居者にとって負担が増えるので、退去者が出てしまう可能性があります。
「家賃が上がるなら、その家賃でもっと新しいところに住めるかも」「これまでの家賃と同じような金額で住めるところを探そう」と思う人が出てきます。
オーナーにとって空室は最大のリスクです。
退去者が出ると次の入居者が見つかるまで空室期間が発生し、その間は家賃収入が入ってきません。
一気に家賃を上げると退去に繋がりやすいので、どのくらい値上げするか慎重に進めましょう。
値上げによって退去者が出ると家賃収入が減少し、キャッシュフローが悪化する可能性があります。
特に不動産投資ローンで物件を購入している場合、空室が続くと毎月の返済により負担が増えることも。
不動産投資を継続するにはキャッシュフローが何より重要です。
手元に現金がなくならないよう、ある程度資金をストックしてから値上げ交渉に踏み切ることも視野に入れておきましょう。
では、少しでも退去者を減らすにはどうすればいいのか。注意点を解説します。
実際に値上げを決めたら、とにかく早めに入居者に通知しましょう。
退去通知のように法律上の告知時期の規定はありませんが、入居者にも住み続けるか検討する時間が必要です。
考えたのちに退去する可能性もありますが、退去の意思も早めに伝えてもらえば次の入居者も見つけやすくなります。
「誠意を伝えるため、まずは口頭で値上げの意思を伝えよう」と考える人もいるかもしれませんが、入居者からすると値上げはプラスな事象ではないので、顔を合わせて話しているとつい感情的になってしまう可能性があります。
大切な契約内容に関する告知なので、「言った言わない」というトラブルを避けるためにも、書面での告知がおすすめです。
配達証明付きの内容証明郵便(※)を使うと、「(実際は知っているのに)読んでいない」としらを切られるリスクも避けられるでしょう。
(※)郵便を出した内容や発送日、受け取った日付など書留郵便物を配達した事実が証明できます。
値上げのタイミングはいつでも可能で、「賃貸契約の更新のタイミングに合わせよう」と考えがちですが、できるだけ避けたほうが良いでしょう。
更新のタイミングで値上げ交渉をすると、交渉がうまくいかない場合に入居者が正規の更新手続きをしてくれない可能性があります。
そうした入居者は「法廷更新」という手続きをとることがあり、値上げができない上に更新料がもらえなくなる場合があるので注意しましょう。
家賃の値上げは入居者にとってはマイナスな出来事。一歩間違えればトラブルに発展する可能性もあります。
そうならないために値上げ交渉をスムーズに進めるコツを解説します。
家賃の値上げは、入居者に少しでもメリットがある条件を付け加えるとスムーズに進めやすくなります。
「値上げに応じたくない」と言われたら、次回の更新料を無料にするなどの具体的な優遇措置を提示する方法があります。
更新料の支払い時には一度にまとまった費用がかかるので、その負担が減ることは入居者のメリットになります。
また、更新率の向上にも繋がります。
家賃が値上げされると入居者は引っ越しを検討しますが、他の物件を改めて借りるとなると敷金礼金、引っ越し費用もかかってきます。
値上げに応じるよりも結果的に負担が大きくなるため、歩み寄る姿勢を見せれば同意してくれることがあります。
家賃の値上げが正当であるという根拠を提示することも大切です。
不動産会社に尋ねたりネットで検索したりして、近隣の家賃相場を調べてみましょう。
エリアや駅からの距離、物件の間取りや広さ、築年数ができるだけ近い物件を選んでデータを集めます。
これまでの家賃が相場よりも安いということが目で見てわかる資料を準備しておくと納得してくれる可能性が高くなります。
周辺の相場より2万円ほど安い家賃だった場合でも、いきなり2万円上げるとそれまでの入居者はほとんどいなくなってしまう危険性が高いです。
周辺の家賃相場が把握できたら、それと対象物件のこれまでの家賃を照らし合わせ、無理のない範囲の値上げ額を設定しましょう。
部屋のリノベーションや共有部分の設備改善を行うことで、値上げ交渉がしやすくなるケースもあります。
物件の資産価値を上げておくと空室対策や売却という出口戦略でも有利に働きます。
入居者が普段から管理会社にいい印象を持っていると、交渉がうまくいきやすくなります。
物件周辺の清掃や植栽の手入れなどの管理をきちんと行い、入居者からの連絡にはこまめに返すのがベターです。
当たり前ですがトラブル対応などで顔を合わせたときは、誠意のあるコミュニケーションを図ることが大切です。
家賃値上げを拒否されたとき、どうすればいいのか。対処法を解説します。
まずは根拠となる周辺の家賃相場などの資料を改めて見せ、入居者全員に協力してもらっていることを伝えましょう。
「特定の入居者だけ家賃を安くすることはできない」ということもきちんと伝え、協力を丁寧にお願いします。
書類を送って終わりにするのではなく、納得がいかないという入居者がいる場合は、真摯に話し合うことも大切です。
丁寧に交渉を続けても値上げに同意が得られない場合は、法的な処置を取ります。
当事者同士だけでうまく合意できない場合でも、調停員などを交えることでスムーズに交渉が進むこともあります。
調停でも合意が得られない場合は、訴訟を起こすことになります。
裁判所が選定した不動産鑑定士が周辺の家賃相場などを調査し、最終的な値上げ家賃の妥当性を判断します。
値上げの根拠がしっかりしていて、いきなり多額の値上げでなければ認められる可能性が高いでしょう。
実際には訴訟費用の負担が大きいことから、家賃の値上げ交渉で訴える人はほとんどいません。
場合によっては弁護士にも相談し、できるだけ話し合いでの解決をおすすめします。
家賃の値上げ交渉は管理会社が代行することも多いですが、家賃を受け取るのはオーナーです。
値上げ交渉では、オーナーと管理会社との連携も大切になってきます。
今回は、家賃値上げ交渉の注意点やコツについて解説しました。
オーナーは
・家賃が相場を下回ったとき
・家賃相場が上がったとき
・固定資産税が増額されたとき
家賃を値上げする権利があります。
ただし、実際に値上げを適用するには入居者の同意が必要になります。
勝手にオーナー側だけの意思で家賃を値上げすることはできません。
毎月の家賃額が変わると、入居者にとって負担が増えるということは想像できます。
できるだけ納得してもらえるよう、慎重に交渉を進めていきましょう。
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