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【不動産賃貸経営】不動産オーナー・大家さんに必要なインボイス制度について

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【不動産賃貸経営】不動産オーナー・大家さんに必要なインボイス制度について

今年の10月1日から始まるインボイス制度について、この新しい消費税の制度が不動産のオーナーや大家さんにどのような影響があるか。

まだよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今年の3月1日までに申請する必要があるため「いつか勉強しよう」と引き延ばすことがもう出来ません。

今回の記事で「インボイス制度」が不動産オーナーや大家さんにどのように影響するのかを理解し、対策に活かしてください。


<目次>
インボイス制度とは
 そもそもの消費税の仕組みをおさらい
 インボイス制度が生まれた背景
 インボイス制度の基礎知識
 請求書発行の仕組みが変わる
インボイス制度導入後の消費税支払いと受領の仕組み
 これまでの免税事業者にとって
 これまでの課税事業者にとって
免税事業者である不動産オーナーにとってのインボイス制度
 インボイス制度導入から3つのパターンが生まれる!
 インボイス制度が影響しない場合
 インボイス制度が影響する場合 
インボイス制度が不動産経営に及ぼす3つの影響
 ①テナントが退去する・賃料減額を要求される
 ②空き物件のテナントに次の借り主が見つからない
 ③テナント物件を購入事に消費税還付ができなくなる
インボイス制度で不動産オーナーが取るべき対策
まとめ


インボイス制度とは


インボイス制度とは、消費税の制度であり、税額計算をインボイス方式とする制度です。

インボイス方式とは、インボイス適格請求書) 」を用いて、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。

「インボイス(適格請求書)」とは、国が認める請求書のことであり、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。


この一見複雑な「インボイス制度」を理解するには、消費税の仕組みから理解する必要があり

その上で不動産経営においてインボイス制度が影響しない場合影響する場合がある事を見てみましょう。


そもそもの消費税の仕組みをおさらい


そもそもの消費税のおさらいをすると、消費税は原則として国内で行われる物品の販売・貸付・サービス提供などの取り引きに課税される税金です。

※消費税は取り引きにより対象となるもの・対象とならないものがあります。

※後に述べますが、土地の売買や住宅の貸付、給与等労務や保険業務などは非課税取引とされています。


事業者が受け取る消費税

・消費者は対象となるものに代金と共に消費税を支払う

・事業者は預かり金的に、消費者から消費税を受領する

この仕組みにおいて、事業者が受け取る消費税を、消費税法では「課税売上に係る消費税額」といいます。


事業者が支払う消費税

事業者は事業のために商品などを仕入れて、さまざまな経費を支払います。

経費の支払い事も消費税は課せられており、事業者は商品やサービスの代金とともに消費税相当額を支払います。

事業者が支払う消費税相当額は仮払金的な性質をもっており、これを消費税法では「課税仕入等に係る消費税額」といいます。

事業者の納税の義務
 

事業者は基本的に一年に一度、国に消費税の申告と納付をする義務があります。

納付する消費税の計算は、上記「課税売上に係る消費税額」から「課税仕入等に係る消費税額」を差引くことができます。 


免税事業者と課税事業者

消費税は全ての事業者が支払うのではありません。

納税義務の有無の判定は「基準期間」課税売上高が1,000万円を超えるか否かによります。

この「基準期間」は、個人事業主であれば前々年、法人であれば前々事業年度(事業年度が1年の場合)を指します。

課税売上高1,000万円を超えない事業者は「免税事業者」となります。   

「免税事業者」は消費税の申告・納税義務はありません。 

課税売上高1,000万円を超える事業者は「課税事業者」となります。


●「益税」について 

「免税事業者」は消費税の申告・納税義務はありませんが、商品などの代金受領時に消費税相当額をプラスして預っています。

預かった消費税相当額は、納税する義務はないのでそのまま「免税事業者」の利益になります。

これを「益税」と言い、これまでの消費税法では「免税事業者」であっても請求に際しては消費税を上乗せして請求を行うことが通常でした  

取引相手の事業者が消費税の納税義務者であるか否かを知る術はなかったので、やむ得ない事でした。


インボイス制度が生まれた背景


●背景その1

「課税仕入等に係る消費税額」は常に全額を差引けるわけではありません。 

差引くことのできる「課税仕入等に係る消費税額」の計算にはいくつかのルールがあります。

「課税売上に係る消費税額」から「課税仕入等に係る消費税額」のうち、適正な金額を差引くことを「仕入税額控除」といいます。

この「仕入税額控除」の要件を厳格化するために、消費税インボイス制度が導入されることになりました。


●背景その2

消費税には導入当初から「益税問題」が指摘されていました。 

益税問題とは、国に納められるべき消費税相当額が、事業者の利益になってしまうことをいいます。

これは、「国」から「収入が多くない個人事業者」への優遇措置的な考え方とも捉えられていました。

ところが、今後のインボイス制度導入は、消費税の「益税問題」の解消のために導入された、といわれています。  


インボイス制度の基礎知識

上記までの理解を深めた上で、具体的にインボイス制度について確認していきましょう。

●正式名称:「適格請求書等保存方式」

●導入は?:2023年10月1日から

●登録は?:2023年3月31日まで!


【インボイス制度の仕組み】

<売手側>

売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。

<買手側> 

買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(適格請求書)の保存等が必要となります。

買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。


【前提となる「適格請求書発行事業者登録制度」】 

インボイス制度の前提として、新たに「適格請求書発行事業者登録制度」が創設され、消費税の課税事業者には登録番号が附番されます。 

「適格請求書発行事業者」から交付された「適格請求書(インボイス)」の保存が仕入税額控除の要件であり、義務となります。

これまで免税事業者であった事業者も「適格請求書発行事業者」に登録できますが、登録をする事により消費税の課税事業者となります。

登録をしていない免税事業者は適格請求書を発行することができません。 


下記の資料は、インボイスの記載事項6項目についてまとめたものです。

国税庁HPより引用     


請求書発行の仕組みが変わる

・2023年9月までは、従来通りどんな請求書でも発行できる。

・2023年10月以降は、インボイス制度導入により、国が認めた請求書の発行でないと、代金を支払った事業者にとってその代金は経費として認められない。

すると、買い手である代金を支払う側の事業者は、国が認めていない請求書では「(この消費税は)ウチの経費にならないから」という理由で、消費税を支払ってくれない可能性が出てきます。

あるいは、不動産業の場合賃料の引き下げを要求されるという可能性も出てきます。

ではどうすれば良いかというと、売り手である代金を受け取る側の事業者は「国が認めた請求書を発行すれば良い」ということになります。この国が認めた請求書がインボイス(適格請求書)です。  

  

この正当な取引により、買い手である代金を支払う側の事業者は、消費税を正当に支払ってくれるということになります。 

ただし、事業者によってはこの制度にこだわらず、インボイス(適格請求書) での請求でなくても、消費税を払ってくれるところもあるかもしれません。    

   その場合は代金を支払う事業者にとって、支払った消費税分が経費として計上できないというだけに過ぎません。   ですが、2年、3年と、この仕組みに慣れてきた頃には、こういうわけにはいかない可能性が出てくるでしょう。)    



インボイス制度導入後の消費税支払いと受領の仕組み


ここからが本題です。

インボイス制度がスタートすると、不動産賃貸経営のオーナーや大家さんがどのように影響を受けるのかを詳しく見てみましょう。

年間売り上げが1,000万円未満の不動産オーナーや大家さんで「免税事業者だから無関係」だと考えられる方もいます。

ですが、インボイス制度は免税事業者だからこそ関係がある制度です。


これまでの免税事業者にとって

これまでの免疫事業者は消費税の納税は必要ありませんでした。

しかし、インボイス制度が導入されると、これまでの免税事業者も納税が必要なケースが出てきます。

インボイス制度は、免税事業者こそ関係のある制度です。

この後に見ていきます。


これまでの課税事業者にとって

課税事業者にとって、納税が必要な事はこれまでと変わりありませんが、インボイス(適格請求書)が発生することで手間や手続きが増える事になります。



免税事業者である不動産オーナーにとってのインボイス制度

これまでの「免疫事業者」である不動産オーナーにとって影響が大きいインボイス制度。

どのような影響があるか、詳しく解説します。


インボイス制度導入から3つのパターンが生まれる!

インボイス制度が導入されると、「免税事業者」にとっては以下の3つのパターンが生まれる事になります。 


●パターン①:これまでの免税事業者が課税事業者になり、消費者(テナントを貸している事業者)から受領した消費税を納税する。 

つまり、売上が1,000万円以内でもインボイス制度の登録をして、課税事業者になるり、消費者(テナントを貸している事業者)から正当に消費税を受け取る。  


●パターン:事業者が、そもそも消費者から消費税を受領できない。 

2023年10月以降も免税事業者をそのままを続けている事により、インボイスでの請求ができないため、取引先の判断で消費税を支払ってもらえない可能性が出てくるかもしれません。
 


●パターン③:事業者は、これまで通り消費者から消費税を受領し、納税はしない。 

2023年10月以降も免税事業者のままでいても、取引先の方針でインボイス適格請求書)での請求でなくても、消費税を払ってくれるというケースです。     

一般的なサービス業や小売業などで、商売の相手が一般消費者の場合は、請求書の発行がなくても支払いに消費税が加算されているのは通常の事なので、違和感なく消費税を支払われるでしょう。     

ただし不動産経営においては、このパターンは考えにくいでしょう。     


インボイス制度が影響しない場合

居住用物件や土地だけを経営している不動産オーナーにはインボイス制度が影響しません。

●消費税がかからない収入(課税対象にならない収入)

・アパートやマンションの家賃収入

・家賃に含まれる駐車場代

・土地代

・土地の売却金額

など

これらの収入はそもそも税金を受領していないので、対象外となり、インボイス制度が影響しません。


インボイス制度が影響する場合

●消費税がかかる収入(課税対象になる収入)

・店舗や事務所の賃貸収入

・倉庫の賃貸収入

・家賃とは別契約となる貸駐車場の賃貸収入

・太陽光発電の収入

・アンテナ基地局の収入

など

これらの賃貸収入がある不動産オーナーは、これまでが免税事業者だとしてもインボイス制度の登録をして課税事業者となり、賃貸の収入にこれまで通り税金を受領する必要があります。

つまり、これらの賃貸収入がある不動産オーナーは、インボイス制度が影響します。

※ただし、店舗や事務所の賃貸収入のうち、入居しているテナント側が免税事業者の場合は、基本的には賃貸オーナーからインボイスを発行する必要がありません。  

課税事業者の場合、賃貸オーナーからインボイスでの請求が必要です。) 


●特殊なケースで消費税がかかる収入

・賃貸期間が1ヶ月未満のケース

・賃貸物件の売買収入

これらは家賃収入・賃貸の収入でも消費税がかかるケースであるため、インボイスでの請求を検討する必要があります。




インボイス制度が不動産賃貸経営に及ぼす3つの影響

実際に、不動産経営にはどのような影響があるのでしょうか。

3つの大きな影響があると考えられています。 

この件も、免税事業者にとっての影響となります。  

不動産オーナーや大家さんが現場で免税事業者であるケースは少なくなく、またテナントを借りる借り主が課税事業者である事が多いため、この影響が起こってきます。

詳しく見てみましょう。


①テナントが退去する・賃料減額を要求される

消費税がかかる賃貸収入】である賃貸物件(テナント)に、インボイス(適格請求書)でない請求書で支払いを請求した場合、テナント借り主は、支払う消費税を「仕入税額控除」の対象として経費に挙げられないため、困ってしまいます。 

そこでテナント借主は 

・そのテナントから退去して、インボイスで請求書を発行してくれる別の物件に移る 

・消費税を支払わないと言う 

・消費税分の家賃値下げを要求する 

という事になるかもしれません。

これらは、不動産オーナーや大家さんにとっては経営のリスクとなります。

これは、テナントである貸店舗や貸事務所だけでなく、貸倉庫や貸駐車場・太陽光発電による売電収入や、携帯基地局アンテナの設置料収入を持っているオーナーも、影響を受ける可能性があります。


②空き物件のテナントに次の借り主が見つからない

テナント借り主にとって、免税事業者から物件を借りることは、税金面で不利に働きます。

免税事業者であるオーナーに支払う消費税が、仕入税額控除の対象とならないため、経費が大きく嵩んでしまうためです。

そこで、そもそもテナントを借りる際に、信頼のある課税事業者であるオーナーや大家さんの物件を探し選ぶ事になるでしょう。

よって、免税事業者である不動産の物件は選ばれなくなります。


③テナント物件を購入事に消費税還付ができなくなる

不動産をテナント物件として購入(取得)した場合にも、影響が出る可能性があります。

これまでは、事業用に不動産を購入した場合にかかった建物部分の消費税は、仕入税額控除が認められていました。

インボイス制度が始まると、インボイス制度の原則としては個人や免税事業者から購入した場合は、仕入税額控除ができないという事になります。

(※ただし一部例外があり、宅地建物取引業者が個人や免税事業者から取得する「建物」に関しては、これが賃貸目的でなく、売買目的の物件であれば、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。)


インボイス制度で不動産オーナーが取るべき対策


現在所有するテナントに、課税事業者が入居している(借りている)場合は、その入居者に対してインボイスでの請求をすべきであるため、

免税事業者である不動産オーナーや大家さんは、インボイス制度の登録をして課税事業者になるべきでしょう。

現在の借り主が退去するのを防ぐ事ができます。

消費税の負担増しにはなりますが、退去のリスクをなくす方法になります。


また、不動産(物件)自体に価値や魅力があり、借り主がインボイスの発行を求めず借り続けたいという意思があれば、インボイス制度を無視することも可能ではありますが、これから始まる新しい制度においては、そのような事が今後経営にどう影響するかは、予測がつきにくい現場です。


インボイス制度の登録ができ、課税事業者となり、インボイス発行ができれば、インボイスの請求ができる物件(テナント)を探している事業者に、今後選んでいただける事にもなります。



まとめ

これまで免税事業者であった不動産オーナーや大家さんにとって、インボイス制度は関係がないと思われていた方にも、今回の記事を読んで、今後の検討が必要である事をご理解いただけたでしょうか。

貸店舗や貸事務所などのテナントを所有しているオーナーや大家さんにとって、必見となる記事です。

インボイス制度がどのような影響を与えるか、どのような対策があるかをまとめました。

ぜひご参考にされてください。


賃貸オーナーが知っておくべきインボイス制度については、動画でも解説しておりますので、ぜひご覧ください。



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