賃貸管理でよくあるクレーム・トラブル6選
2020.06.25
不動産投資におけるデッドクロスはどのようにして起こるのでしょうか。
またデッドクロスを回避するためにできるリスクマネジメント戦略にはどのようなものがあるでしょうか。
今回の記事では、不動産業におけるデッドクロスについて詳しくわかりやすく解説します。
デッドクロスとは、「ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態」のことです。
この状態になると、帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、その利益に対して課される所得税額が増えることで資金繰りが悪化します。
キャッシュフローには変化が無いのに、税金上は大きな利益が出てることになってしまうので、結果として税金の支払額が大きくなってしまうのです。
そのため、資金繰りが悪化、最悪のケースになると経理上では黒字であるにもかかわらず、倒産してしまうこともあります。
つまり、ローンの元金返済額が減価償却費を上回ってしまう状態であるため、帳簿上では黒字計算なのに、実質は赤字で運用している状態です。
ある時点から、損をしている状態で不動産投資を行なっていることになってしまいます。
■ローンの元金返済:実際に現金を支出するが経費として計上できない=帳簿上には表れない
ローンには元金返済額と利息分の2つに分けることができます。
元金返済額は帳簿上、必要経費として計上できませんが、利息分は経費として計上することができます。
元金返済額が経費にならないのは、利益ではなくお金の貸し借り分だからです。
税金は売上から経費を差し引いた利益に対して課税されます。
しかし、お金の貸し借り分は売上ではありません。
もし、借りた分も売上として計上されるのであれば、不動産など一般的に高額な買い物のための融資に課税され税金も高くなってしまいます。
これが成立しないのは借りたお金が売上ではないためです。
同様に返済するお金に対しても課税はされません。
■減価償却費:実際に現金を支出しないが経費として計上できる=帳簿上に表れる
減価償却費は、建物の取得原価を一定年数に分けて費用として配分することがで生じる会計上の費用です。
期間は建物や構造によって税務上の耐用年数と償却率は決められており、一般的に寿命が長い構造の建物ほど耐用年数も長くなります。
つまりは、デッドクロスがある時点から、損をしている状態で不動産投資を行なっていることになってしまいます。
デッドクロスが発生する、具体的な原因をみてみましょう。
例えば以下の①の原因と②の原因が同時に起これば、キャッシュフローはより悪化することになります。
この3つの原因の確認は、後ほどのリスクマネジメント戦略に直接関わってきます。
ローンの返済が進むにつれて利息が減っていくことが、デッドクロスの原因となります。
利息は経費にできるため、帳簿上の利益を圧縮し、節税効果があります。
しかし、年々利息の支払いは減っていくため、帳簿上の黒字が大きくなり、所得税が増えてキャッシュフローが悪化します。
ちなみに、ローンの返済方法には、「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。
●元利均等返済…毎月の返済額が一定となる返済方法です。
●元金均等返済…毎月の返済額のうち元金額が一定となる返済方法です。
どちらの返済方法にもメリット・デメリットがありますが、不動産投資でローンを借りる場合には、元利均等返済を選択する人が多いようです。
しかし、元利均等返済は元金返済額が年々増えていくため、デッドクロスに陥るリスクは元金均等返済よりも高くなります。
ただし、いずれの方法でも年々利息は減っていくため、節税効果が弱まり、徐々にキャッシュフローが悪化するのは同様です。
2番目の原因として考えられるのは、経費として計上できる減価償却費が減っていくことです。
減価償却費は実際の支出を伴っていませんが、帳簿上の利益を圧縮して所得税を減らすことで、節税効果になります。
しかし、減価償却には期間があるため、期間が過ぎた後は経費として計上できず、帳簿上の収入が一気に増えて所得税が増えます。
この事により、資金繰りが悪化してしまうことになります。
<減価償却とは>
不動産などの固定資産は、時間の経過によって価値が減少していきます。
そこで、それらの固定資産は購入時に全額を費用計上するのではなく、一定年数(耐用年数に基づいて算出)に分けて毎年費用として計上します。
このような費用計上の方法を、減価償却といいます。
例えば物件だけでなく、経理上では車の費用や大きな機械を購入した場合も減価償却となります。
なお、不動産のうち建物は減価償却しますが、土地は経年で価値が下がらないため減価償却しません。
減価償却の方法には、定額法と定率法の2通りがあります。
●定額法:固定資産の取得費用を使用可能な年数(耐用年数)に渡り、毎年一定額を費用計上していく方法。
●定率法:減価償却費用を償却期間に渡り、毎年一定の割合で費用計上していく方法。初期ほど経費計上できる金額が大きく、年数が経つにつれて減っていく。
いずれの方法も、減価償却期間を過ぎれば経費計上はできなくなります。
実際の不動産収入に変化がなくても、それまで経費として計上できた分がなくなるため、帳簿上の利益は大きくなります。
これにより、帳簿上の利益に課税される所得税額は増えるため、キャッシュフローが悪化します。
築年数が経過すると、入居率が低くなったり、家賃を減額せざるを得ないといった事が出てきます。
デッドクロスによって引き起こされる本質的な問題は、キャッシュフローが悪化して現金が不足し、黒字倒産するリスクがあることです。
デッドクロス自体は避けられないといった場合も、キャッシュフローが赤字になることを避けることはできます。
そのためには、ローン返済や税金を支払えるように不動産収入を大きくする必要があります。
ところが、物件の家賃収入が減ってしまえば、当然の事ながらキャッシュフローは低下してしまいます。
そこで、実質的な赤字経営となり、デッドクロスによる帳簿上の黒字倒産のリスクが拡大します。
それでは、デッドクロスになることを避けるためには、どのようなリスクマネジメント戦略があるのでしょうか。
具体的に8つの戦略について解説します。
頭金として、投入する自己資金をなるべく増やすことで、借入額を減らすことができます。
借入額が減れば月々の返済が減る、あるいは借入期間が短縮されるため、デッドクロスになりにくい状態で不動産投資を進められます。
自己資金を多く入れて購入すれば、ローンの元金返済が小さくなるため、資金繰りに余裕が出ます。
借入期間を短縮できる可能性があるという点でも、デッドクロスのリスクを減らせるでしょう。
どの程度の自己資金を出せばデッドクロスを避けられるかは、収益シミュレーションによってある程度は把握できます。
家賃収入から支出を引いて毎月の手残りがどれだけ残るか、そしてその利益に課される税金は予測するしかありませんが、減価償却費とローン返済額は物件購入前の時点で知ることができます。
シミュレーション結果を参考に、資金繰りに余裕が出る程度まで自己資金を出せばよいでしょう。
ただし、自己資金を多く入れれば、不動産投資のメリットである「レバレッジ効果」は薄れます。
極端な話、全額自己資金で購入すれば、デッドクロスは発生しません。
また、保有期間中の突発的な支出に備えて自己資金を残しておくことも必要です。
これらのことを踏まえた上で、自己資金と借入金のバランスを上手く取っていくことが重要です。
減価償却期間がローンの支払期間よりも短ければ、減価償却期間が終了した時点でデッドクロスが発生します。
減価償却期間が長い物件を購入すればデッドクロスになることを防いだり、デッドクロスが発生するまでの期間を長くすることができます。
そのためにも、残存耐用年数が長い新築物件、築浅物件などを購入すれば減価償却期間は長くなります。
そして減価償却期間が終わるまでにローンの返済が完了すればデッドクロスは発生しにくくなります。
デッドクロスにならないようにするためには、購入を検討している物件の減価償却期間とローンの返済期間を見比べて、できるだけ長く減価償却費を計上できる物件を選ぶことにするのが1つのリスクマネジメント戦略となります。
中古物件の購入は購入費用を抑える事はできますが、新築に比べ減価償却できる期間が短いということになります。
つまり購入はしやすいものの、減価償却できる期間が短いぶん、デッドクロスに陥る可能性は高いということになります。
ですから、デッドクロスが起こらないようにするためには、築年数の経った中古物件を購入しない方が良いでしょう。
では、新築や築浅の物件を購入すればよいかと言うと、ここでも注意が必要です。
他の項目でも述べる通り、返済方法や融資期間によってリスクを伴うケースがあります。
銀行の融資期間を長くすることもデッドクロスを避けるためのリスクマネジメントになります。
また、借入後に融資金を金利の低いところへ借り換えることでも、デッドクロスの対策に検討する必要があるかもしれません。
月に返済する総金額を減らすことによってキャッシュフローが良くなるため、デッドクロスの回避になります。
新築物件での投資において、デッドクロスを回避するには、借入は建物投資額のみとするべきでしょう。
なぜなら、土地価格に対しては減価償却がなく、減価償却費は建物価格のみにしか計上されないからです。
元々土地を持っている人であれば、借入はもちろん建物投資額のみとなります。
一方で、土地を持っていない人が土地活用をする場合には、デッドクロスにならないよう、自己資金を用意して土地は全額最初に購入すべきです。
新築物件の投資でデッドクロスを回避するには、借入金の返済額を減価償却費以内で設定することも重要です。
2016年(平成28年) 4月1日以降に取得する事業用不動産の減価償却方法は、定額法と呼ばれる計算方法に一本化されています。
定額法の減価償却の計算方法は以下の通りです。
減価償却費 =取得価額×償却率×業務に供された月数÷12
償却率は、耐用年数に応じて代わります。
シミュレーションを立てて、資金計画を行う際に、減価償却費以内で借入金を設定することが必須となります。
日本のローン返済の方法は一般的に元利均等返済が用いられます。
元利均等返済は、初期は利息部分が大きく経費割合が増えますが、後半になるにつれ利息部分が減り元金割合が増えます。
経費計上できる利息が減り、経費計上できない元金が増えるため負担は大きくなってしまいます。
そこで、ローン返済の方法として、元金均等返済を選択します。
利息部分は減っていくものの元金返済額が変動しないため、元利均等返済に比べデッドクロスが起こる可能性は低くなり、支払いも安定します。
このことによりデッドクロスが起こるリスクを減らす事ができます。
デッドクロスによって引き起こされる問題は、キャッシュフローが悪化して手元の資金が不足することです。
利回りが高い物件を買うことはデッドクロス自体を避ける方法ではありませんが、税引き前のキャッシュフローが大きければ、税引き後のキャッシュフローがマイナスになるのを防ぐことができます。
ただし、利回りの高さは、表面利回りではなく実質利回りで判断する必要があります。
どの程度の利回りの物件を買うべきかは、収益のシミュレーションが必要です。
少なくとも、シミュレーションの結果、税引き後のキャッシュフローがマイナスになるような物件は避ける必要があります。
デッドクロスになってしまった場合、不動産を売却して現金化することは1つの対策です。
地価の変動などによって価値が上々し、借り入れた金額よりも高い金額で売却できれば、むしろデッドクロスによる失敗とは考えられず、不動産投資として成功したとも言えます。
売却する際は、譲渡所得にかかる所得税や住民税、仲介手数料などが発生します。
どれくらいの料金がかかるかは綿密な確認が必要です。
そもそも築年数の古い物件で投資を始めるのであれば、デッドクロスを踏まえて、売却を考えて投資を進めることも戦略となるでしょう。
デッドクロスを迎えた後は、少なからずキャッシュフローが悪化します。
帳簿上の黒字倒産とならないため計画や対策が必要です。
デッドクロスになった場合に、新築などの減価償却期間が長い物件を追加で購入することで、経費計上できる金額が増えるので、利益を圧縮でき、節税することが可能になります。
もちろん、この際は資金計画とシミュレーションが必要です。
減価償却が終わってデッドクロスを迎え、節税効果がなくなりキャッシュフローが悪化する、このタイミングで新たに物件を購入して減価償却費を増やすという戦略になります。
ただし、減価償却が終わるタイミングで必ず売却できるとは限らないため、不動産投資の最初からこの計画を持つ時は、そもそもリスクを抱えていることにもなると言えます。
借り入れている融資金を金利の低いところへ借り換えることで、デッドクロスを対処する方法も挙げられます。
返済する総金額を減らすことでキャッシュフローが良くなり、デッドクロスの回避に繋げることが可能です。
返済期間が長いものに借り換える方法もあります。
ただし当然の事ですが、将来的に返済する期間が増えるというリスクがあるので、注意が必要です。
念入りなシミュレーションが必要です。
中古の収益物件でデッドクロスになっているときは、借入金の繰上返済を行うことも1つの対策です。
繰上返済では、返済額と返済期間の2つを圧縮できますが、返済期間を変えずに毎月の返済額だけを減らすタイプの繰上返済もあります。
元々、借入期間が耐用年数満了以内となっている物件であれば、毎月の返済額だけを減らす繰上返済を選ぶのも、キャッシュフローをプラスにするための選択の一つです。
これはデッドクロスを迎える前から対策として用いる事の効果的です。
ただし、繰り上げ返済によってその後の資金繰りが回らなくなるケースもあるので、シミュレーションと検討が必要です。
不動産業や不動産投資での「デッドクロス」について、詳しくわかりやすく解説しました。
リスクマネジメント戦略や、デッドクロスとなってしまった場合の対策も挙げてあります。
不動産投資を行うオーナー様へのアドバイスやシミュレーションを行う際の参考にしてください。
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