賃貸管理でよくあるクレーム・トラブル6選
2020.06.25
社外の宅建士に、IT重説の業務のみを外部委託(アウトソーシング)するケースがあります。
その際に、IT重説の外部委託(アウトソーシング)は合法なのか、違法なのかと迷う方がいらっしゃるかもしれません。
また、違法とならないための注意点を念入りに確認されたい方もいるでしょう。
今回の記事では、IT重説の外部委託や外注を行うに当たっての方法や注意点について解説させていただきます。
人手不足と言われる不動産業務で、特に2〜4月の不動産賃貸営業の繁忙期には、IT重説を外部委託(アウトソーシング)できればとても助かるでしょう。
この記事より注意点を参考にしてください。
▶︎参考となる記事
「IT重説とは? IT重説を活用する5つの必要性と、6つの注意点」
「アウトソーシング」とは、社内の業務を、社外の専門家に外部委託や外注をすること。
通常社内で行っている業務も、外部の業者や専門家に外注したり委託する事により、任務の負担が軽減されたり、時間の節約になったりします。
不動産業界でも、特に負担や時間を要する以下のような業務を外注するケースが増えてきています。
・物件の内見への立ち会い
・重要事項説明書の作成
・重要事項説明書の作成のための調査
・IT重説(オンラインでの重要事項説明)
ただしIT重説に関しては、法的な注意点を理解しないまま、外部委託や外注をすると法律上で違反となるので、確認が必要です。
宅地建物取引業法では
・2017年にオンライン上での重要事項説明が可能になり
・2022年5月に不動産取引の完全電子契約化解禁となり
これらの、宅建業法上の二つの大きな改正のおかげで、複雑で時間を要する重要事項説明の業務がIT化を始め(IT重説)、不動産取引のデジタル化により、業務効率化が加速することが期待されてきました。
▶︎参考記事:「IT重説とは? IT重説を活用する5つの必要性と6つの注意点」
更に、そもそもの業務量が多い不動産業務では、更に業務の軽減がはかれるように、IT重説の外部委託(アウトソーシング)を行う会社が出てきました。
コロナ蔓延以降、企業ではオンラインでの取引は一般的になり、また一般家庭でもZOOMなどの普及により、オンラインでのやり取りが抵抗なく普通に行われるようになったので、IT重説は社外の宅建士に依頼しやすくなりました。
人手不足と言われる不動産業界において、特に時間を要する重要事項説明の業務を外部委託できる事は、生産性向上に役立つとして注目され始めています。
宅建免許を持つ社員は業務量も多く、契約が取れると同時にその後の業務が増えてしまいます。
しかし宅建資格を持つ社員も営業に回る必要があり、業務量を軽減して有効な時間を使えるようにしたいのが会社の実情です。
そこで、入居申込後の宅建士にしか出来ない業務をアウトソーシングする事で、宅建資格を持つ社員は営業提案に専念して、生産性や効率を上げようという考えを持つ会社が増えてきています。
IT重説を外部委託(アウトソーシング)する際は、その方法と注意点に慎重になる必要があります。
法律として重要事項説明の代行は認められていません。
社外の宅建士にIT重説を依頼することは違法とみなされます。
(フリーの宅建士に重説の「作成」代行を依頼する、外注をするのは合法です)
重要事項説明をおこなう宅地建物取引士は、その宅建業者に所属していることが前提であるため
・社外の宅建士に依頼する
・フリーランスの宅建士に依頼する
上記のケースは法的に認められていないということになります。
この事は、宅建業法第48条に記載されており、重要事項説明を含め、業務をおこなう従業員は、従業者証明書を携帯し、さらに業者の従業者名簿に記載されていなければなりません。
これはもちろん「IT重説」においても同様です。
▶︎参考となるサイト:宅建業法48条(証明書の携帯等)「宅建通信学院 サイバー六法」より
つまりフリーの宅建士(宅地建物取引士)では、通常それらの条件を満たすことができないため、宅建業法違反となります。
宅建業法第35条第1項に、「宅地建物取引業者は、取引の相手方等に対し、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士により、取引にかかわる重要事項について、書面を交付して説明させなければなりません」と記載があり、ここだけ見れば、宅建士であれば社外に外注しても大丈夫なように捉えられます。
更に、宅建業法の中に「重要事項説明を、自社に所属する宅建士が行わなければならない」という記載がないため、外注が直接的に違法とイメージする表現がないようです。
そのために、宅建士であれば、他社に従事している人や、フリーの宅建士に外注してもいいと判断する会社があってもおかしくないと言えるでしょう。
しかし、前項でも述べたように、当該取引の重説(IT重説も同様)ができる人は、その取引の宅建業者か、仲介業者に従事する宅建士に限られるため、違法であると解釈ができます。
つまり、宅地建物取引業法に、外注してはいけないという規定は明文化されていませんが、法律の全体を見れば重説の代行が違法であることがわかります。
▶︎参考となるサイト:重要事項説明(読み合わせ)代行は違法!「行政書士法人 不動産法務研究所」より
IT重説の外部委託を検討する際は、その宅建士と「業務委託契約」を交わし、依頼する不動産会社としてはその宅建士を自社に所属する従業員であるという証明書を発行して、指揮命令下に置き管理し、従業員証明書を発行し携帯させる義務があります。
業務委託契約は、パートやアルバイトとしての契約でも可能です。
この手立てを踏めば、元々社外の宅建士に、IT重説の業務のみを依頼することは違法と見なされず、合法として業務を任せる事ができるようになります。
つまり、宅建業者の業務を行う宅建士は、
●宅建業者の従業者登録(パート・アルバイトでも可能)をする
●従業者証明書を携帯する
この2つの要件を備える必要があります。
上記の項目で解説した、外部の宅建士と業務委託契約を結ぶ方法以外にも、以下の方法で違法とならないケースがあります。
それは、依頼する宅建士を共同仲介業者とする方法です。
その宅建士を、重要事項説明書の「免許・供託情報欄」に、他の宅建業者と同様に併せて記載し、「説明する宅地建物取引士」として重説をする宅建士の指名を記載します。
この方法を取れば違法ではありませんが、この場合は、宅建士として報酬を払うのでなく、仲介手数料の折半という形で支払う事になり、経理上の対応も変わってきます。
国交省は「指揮命令系統が確立されていない会社の場合、煩雑になる繁忙期などに宅建士のマネジメントが行き届かないリスクがある」と、不動産賃貸管理会社における、顧客トラブルの増加を懸念しています。
IT重説を外部委託するメリットを活かし、会社のマネジメントに生かせると良いでしょう。
不動産賃貸管理会社にとって、宅地建物取引士(宅建士)の確保は、給与面で大きな経費となって経営を圧迫します。
しかし前述した通り、社内の宅建士はそもそも資格を持つがゆえ、業務量が多くなり、資格が必要な業務にばかり時間を取られていると、営業面での業務が捗らず、業務効率化とい生産性が低下してしまいます。
業務効率を上げて、人手不足を解消するにはIT化と外部委託(アウトソーシング)が欠かせなくなります。
不動産賃貸業には、年間を通して繁忙期の仕事量が格段に上乗せされます。
そして繁忙期のタイミングは、営業職も多忙となり、同時期に宅建士の資格を持つ社員の仕事量も増えてしまいます。
そのために、期間限定で業務をこなせる外部の宅建士に、重説を外部委託できる事は、とても助かります。
重要事項説明(IT重説)は、賃貸業務の中で最も大切な業務と言うことができ、そのための調査や準備、重要事項説明書の作成、重説そのものにかかる時間も合わせ、業務量がとても多く時間がかかる仕事になります。
IT重説の外部委託ができれば、その業務の負担が軽減できます。
不動産賃貸物件の取引は、高額商品でもあり、またトラブルも発生しやすい契約と業務です。
故に、IT重説の外部委託は業務量が減るメリットもありながら、トラブルに繋がりかねない、リスクを伴うと言うデメリットがあると言えます。
IT重説を外部委託する際、委託した宅建士の説明能力や接客能力により、結果に良し悪しが出ると言う不安があります。
社内の従業員ではないために、委託した宅建士の能力や人柄などは把握しきらず、また教育も行き届きにくい事でしょう。
信頼のできる宅建士を、長期契約で依頼できる事が望ましいです。
繁忙期にIT重説を外部委託する時は、依頼する側の会社や社員が、手が回らない業務量を抱えている状況であったり、不動産賃貸管理業の繁忙期であったりする可能性があります。
そのような場合、委託した宅建士への「依頼のマネジメント」に不十分なところや、不明確な部分が出てくる可能性があります。
委託したけれども、マネジメントが行き届かなかった事が原因で、トラブルが発生して更に業務が増えてしまう、といった事が起これば元も子もありません。
十分配慮したい点です。
社外の宅建士にIT重説業務のみを外部委託する際の方法や注意点をまとめました。
特に
・違法とならないための業務委託の方法と注意点
・外部委託した際に、業務的にトラブルやデメリットに繋がらないためのポイントや注意点
について解説しています。
不動産賃貸管理業務の繁忙期に、IT重説の外部委託が有効となるよう、この記事を参考にしてください。
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