賃貸管理でよくあるクレーム・トラブル6選
2020.06.25
令和2年6月24日に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」が成立・公布されました。
マンション建替円滑化法の改正では外壁タイルの剥落などで居住者や近隣住民らに危険が及ぶ可能性が高い老朽マンションなどを「マンション敷地売却制度」の対象に追加し、団地型マンションを敷地分割、棟単位で建て替えや売却できる制度も創設することとしました。
これにより、築40年を超える老朽化マンションの建て替えを後押しし、建て替えや敷地売却がしやすくなる可能性があります。
マンションの建替え等の円滑化に関する法律の改正を推進背景は主に2つあります。
国交省によると、現在築40年を超えるのマンションは約81万戸存在しています。
築40年を超えるのマンションは2030年には2倍強の約198万戸、2040年には4.5倍の約367万戸となるなど、10年ごとに倍になると予測されています。
分譲マンションでは管理組合による長期修繕計画が正しく適正に機能し、修繕計画が実施されていれば、躯体寿命は理論上100年ほどになると言われています。
しかし、全てのマンションがそうとは限りません。
特に、築40年を超える古い分譲マンションは自主管理をおこなっているところも多く、住民が高齢化しており修繕計画が破綻しているマンションなども多く見受けられます。
今後も、老朽化や管理組合の担い手不足が顕著な高齢化マンションが急増する見込みです。
もう一つは、老朽化を抑制し周辺への危害等を防止するための維持管理の適正化や老朽化が進み維持修繕等が困難な マンションの再生に向けた取組の強化が喫緊の課題となっているためです。
令和2年6月24日に交付された「マンション建替円滑化法の改正」ではマンション敷地売却の基準が緩和されるのです。
順番に見ていきましょう。
現行法は耐震性不足のマンションのみ要除却認定の対象とされています。
要除却認定の拡大では耐震性不足に加え、外壁の剝落の危険があるマンション、バリアフリー性能が確保されていないマンションの追加を決定しました。
・火災に対する安全性が認められていないマンション
・外壁の剝落の危険があるマンション
・給水、排水その他の配管設備の損傷、腐食その他の劣化により著し衛星上有害となるおそれがあるもの
・高齢者・障害者等の移動に関して国が定める建築物移動等円滑化基準に該当していない(バリアフリー)マンション
これらが新設され、区分所有者・議決権の5分の4以上の合意があれば、敷地売却が可能になります。
団地では棟や区画ごとのニーズに応じ、一部棟を存置しながらその他の棟の建替え・敷地売却を行うためには全員の同意が必要でした。
しかし、新設された「団地における敷地分割制度」では耐震性不足や外壁の剥落等により、要除却認定を受けた建物を含む団地で、敷地共有者の5分の4以上の同意があれば、団地内の敷地を分割を可能とする制度を創設しました。
敷地分割を促進することで、団地内にある一部住棟のみ建て替えや敷地売却を行うなど、柔軟な対応を可能にするのが狙いです。
マンションの建替え等の円滑化に関する法律による建替え事業は、以下の流れで行います。
1、建替え決議※にて可決に必要な割合の賛成を得る。
2、建替え賛成者の3/4以上の合意を得て、マンション建替え組合※設立の申請をする(事業計画などの提出)。
3、都道府県知事の認可を得て、法人格を持つ「マンション建替え組合」を設立する。
4、マンション建替えに賛成しない者の区分所有権をマンション建替組合で買い取る。
5、建替えに必要な登記を「マンション建替え組合」が一括で行う。
6、建替え工事を行う。
7、組合によって新しい建物の登記をする。
8、「マンション建て替え組合」を解散する。
※建替決議
分譲マンションのような区分所有建物について、建物が著しく老朽化した場合や地震による大きな被害を受けた場合などには、建物を元の状態に戻すことが難しいケースや、経済的に見て建物を元の状態に戻すよりも建物全部を建て替えるほうがメリットの大きいケースがあります。
このため、区分所有法の規定では、区分所有者数の5分の4以上の賛成と議決権の5分の4以上の賛成による決議がある場合には、建物を取り壊し、新しい建物を新築することを可能にしています。
この決議が建替え決議です。
※マンション建替え組合
組合の設立が同意されたときは、建替え決議の合意者は全員がこの組合員となる(円滑化法第16条)。
不動産に携わる者としてマンションの老朽化による課題から目を背けるわけにはいきません。
マンションの建替え事業は、耐震性や安全性の確保だけでなく、不動産市場の活性化にも寄与するとして、新法の活用が期待されています。
不動産市場は流動的で、日々ニーズが変化しています。
ニーズの変化に合わせて、法整備を整え、これからどんな事業やサービスが求められるかアンテナを張っておく必要があります。