賃貸管理でよくあるクレーム・トラブル6選
2020.06.25
道路というものは土地や物件の利便性を左右するだけではなく、その資産価値に大きく影響することもあります。
そのため不動産会社たるもの、道路への理解も必要なのです。
さらに道路の幅員の計測においての判断が難しいと悩まれている方も多いのではないでしょうか。
今回は、建築基準法に定められている接道義務や道路幅員の計測のコツをご紹介します。
不動産会社であれば理解しておきたい、接道義務の基本事項についてご説明します。
都市部で指定されている「都市計画区域」では建築基準法により、住宅など建築物の敷地は「幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない」と規定されています。
これがいわゆる「接道義務」であり、道路にまったく接していない敷地や、2mに満たない間口で道路に接する敷地では、原則として建築確認(建築工事などの許可を受ける一定の手続き)を受けることができません。
とくに、下図のような旗ざお状の敷地や不整形な敷地では注意が必要となります。
一般的な長方形の敷であれば接道義務が問題になるケースは少ないのですが、気をつけなければならないのは、対象となる道路があくまでも「建築基準法で認められた道路」だということです。
見た目は道路そのものであっても、それが建築基準法で認められたものでなければ接道義務を満たすことにはなりません。
道路については建築基準法第42条に具体的に規定されており、分かりやすく整理すると次のようになります。
建築基準法 | 道路の種類 | 道路の種類の説明 |
第42条1項1号 | 道路法による道路 | 国道、都道府県道、市町村道、区道において幅員が4m以上のもの |
第42条1項2号 | 都市計画法などにより造られた道路 | 都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法など一定の法律により造られたもの |
第42条1項3号 | 既存道路 | 建築基準法が施行された昭和25年時点(※1)で既に存在した、幅員が4m以上のもの ※1 建築基準法施行後に都市計画区域に編入された区域では、その編入日時点 |
第42条1項4号 | 都市計画法などにより2年以内に造られる予定の道路 | 道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法など一定の法律により、2年以内に新設または変更される予定のものとして特定行政庁(※2)が指定したもの(現に道路が存在しなくても、そこに道路があるものとみなされます) ※2 建築確認事務を取り扱う都道府県または一定の自治体の長 |
第42条1項5号 | 特定行政庁から位置の指定を受けて造られる道路 | 他の法律によらないで造られる幅員4m以上、かつ一定の技術的基準に適合するもので、特定行政庁からその位置の指定を受けたもの(いわゆる「位置指定道路」) |
第42条2項 | 幅員4m未満で一定の要件を満たす道路 | 建築基準法の施行日または都市計画区域への編入日時点で既に建築物が立ち並んでいた幅員が4m未満の道路で、特定行政庁が指定したもの(いわゆる「2項道路」「みなし道路」) |
上表のうち、最後の「第42条2項」による道路は、接道義務に定められた「幅員4m以上」の要件を満たしていませんが、道路の両側の敷地でそれぞれ「道路中心線から2mのラインまで敷地後退(セットバック)をして、将来的に4mの幅員を確保する」ことを前提に、「道路とみなす」ものです。
これらの条件のいずれにも該当しないものは、たとえその形状が道路と何ら変わらなくても、建築基準法の上では道路として扱われません。
また、「建築基準法による道路か否か」と「公道か私道か」はまったく関係なく、「公道に接していなければ建築できない」などということはありません。
建築基準法による接道義務を満たしていない敷地の場合でも、一律に建築が禁止されるというわけではありません。
例えば古くからある水路に蓋をした「暗渠(あんきょ)」部分が道路状に整備されているとき、分類上は「水路」であっても道路に準じた取り扱いがされるケースは多いです。
また、上記の接道義務は火災や災害時などにおける安全確保を目的としたものですから、建築基準法上の道路には接していなくても、代わりに恒久的な広場や公園に接するなどして安全が保たれていれば大きな支障はありません。
そのような場合に適用されるのが「建築基準法第43条ただし書き」です。
しかし、建築基準法上の道路にまったく接していない、あるいは道路に接する間口が2m未満で、「第43条ただし書き」を適用する余地もないという敷地が少なからずあります。
そのような「不適合接道」の敷地では、建物を新築することも、建築確認手続きを要するような増改築工事などをすることもできません。
そのような土地が販売される場合の不動産広告には「再建築不可」などと明記する義務があります。
賃貸仲介物件の前面道路の幅員を調べる場合、道路の形状によっては、どこからどこまでの距離を測ればいいのか判断に迷うことがあるかと思います。
そこで、道路幅員の基本的な計測ポイントを押さえていきましょう。
側溝がある場合
下図のように両端に側溝がある道路の幅員は、側溝と民家の敷地境界が道路幅員の計測ポイントになります。
側溝に蓋がある場合もない場合も、考え方は同じです。
水路がある場合
下図のように水路がある場合は、道路と水路構造物の境界が幅員の計測ポイントになります。
道路が法面になっている場合
下図のように道路の端部が法面になっている場合は、たとえ法面や下の側溝が道路法の道路として管理されていても道路として機能しないため、法面は道路幅員には含まれません。
道路の一部が歩道になっている場合
下図のように道路の一部が歩道になっている場合は、歩道と車道を合わせて幅員を計測します。
歩道にガードレールが設置されている場合も何もない場合も、同じ考え方で捉えます。
また箱形の側溝ではなく、L型側溝が設置されていることがありますが、この場合も側溝と民家の敷地境界が道路幅員の計測ポイントになります。
また道路の端部に側溝がない場合は、地方自治体が設置した道路明示標を道路幅員の計測ポイントとすることができます。
土地を有効に活用しようとすると、指定建蔽率や容積率の制限いっぱいに物件等を建てることになります。
ところが道路幅員が狭いと指定容積率よりもさらに容積率制限が厳しくなることがあるため、不動産会社としては注意しておく必要があります。
まず基本となる道路幅員による容積率制限について、物件等の前面道路の幅員が12m未満の場合には、用途地域によって次のように算出されます。
なお、幅員の異なる複数の道路に接している場合には、広い方の幅員を基準として容積率を算出します。
ここで出た数字を元々の指定容積率と比較し、小さい方(厳しい方)の数値を当該敷地の容積率の最高限度とします。
敷地の前面道路が平行な道であれば幅員の計測や考え方は上で述べた通り分かりやすいのですが、前面道路が変則的な場合はどの幅員を採用して容積率制限を算出すればいいのでしょうか。
ケースごとに解説をしていきます。
前面道路が斜めの形状
反対側の道路境界が斜線になっている場合について解説します。
道路幅員による容積率制限は、角地のように2本の道路に接している場合においては幅員の大きい方の値によって算出します。
上図のように場所によって幅員が異なる場合は幅員の広い方が対象になりますが、接道要件を満たす2m以上接した位置の道路が対象となるので、このケースでは幅員Aを計測します。
前面道路の太さが不均一の形状
道路幅員による容積率制限は、2つ以上の幅員があれば広い方の値を採用できますが、下図のようなケースでは最大幅員を採用できません。
この図ではBの幅員が最も広いですが、東西方向共に道が狭くなっており、前面道路の太さが不均一になっています。
これでは避難の際にBの幅員はまったく機能しないため、実質的に避難上有効な幅員であるAの値が採用されることになります。
しかし東行きが行き止まりの道路であれば、これも避難路にならないため、有効に避難できるCの値が採用されることになります。
2本の道路が並走している
次は、下図のように高架道路と側道が並走しているケースについて解説します。
高架道路と側道が元々ひとつの道路であり、一時的に高架道路と側道に分離して再び合流して1本の道路になるという場合は、2本の道路は全体の幅員で避難上有効に機能しているとの考えから、A+Bの合計の幅員が容積率算出の値として用いられます。
このように広い道路幅員で算出された値が指定容積率を上回った場合は、値の小さい指定容積率によって容積率が制限されることになります。
2本の道路が並走している場合の例外
上のケースと同じように高架道路と側道が並走していても、下図のようなケースでは双方の幅員を合算することはできません。
この図のケースでは側道が再び高架道路と一体化することはなく、車両や人を別のルートに誘導するものになっています。
こうした形状では一体に機能しているとはいえないため、容積率の制限を算出するのに用いる道路幅員は、Aの値のみになります。
道路は、土地や建物を管理する不動産会社にとって様々な場面で関係してくる重要なものです。
しかし、道路幅員の計測など、どうすれば良いかわからなくなることも多々あるかと思います。
そのような時を見越して、定期的に基本的な知識や情報を見直しておくことが必要です。