賃貸管理でよくあるクレーム・トラブル6選
2020.06.25
従来の民法では賃貸人(=貸す側)が修繕義務を履行しない場合に、賃借人(=借りてる人)が自ら修繕していいのか?といった規定が明確にないので、どちらの義務か不鮮明になりやすく、賃貸トラブルに発展しがちな事象でした。
そこで今回の民法改正では賃借人による修繕の権限が一定のルールに基づき明文化されました。
これによって、賃貸トラブルになった際も明文に則り手続きを進めることが出来ます。
また、賃貸管理会社の実務でのやりとりが大きく変わってきますので詳しく解説させて頂きます。
改正民法第607条の2(賃借人による修繕:新設)
改正民法第606条の1(賃借人による修繕等)
現行民法第608条の1(賃借人による償還請求)
賃貸借は当事者一方がある物を使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引き渡しを受けた物を契約が終了した時に返還する事を約することによって、その効力を生ずる。
【新設!】改正民法第607条の2(賃借人による修繕)
借りているお部屋の修繕が必要な場合に、次の状況において賃借人による修繕が認められることになりました。
①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知、または賃貸人がその旨を知ったにも関わらずに、相当の期間内に必要な修繕をしないとき
②急迫な事情があるとき
現行民法第608条の1(賃借人による償還請求)
賃借人は、賃借物について、賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちに償還を請求することができます。
改正民法第607条の2の規定に従って、賃借人が修繕した時はその費用は賃貸人が負担することとなります。
改正民法第606条の1(賃借人による修繕等)
賃借人に帰責事由がある場合には賃貸人が修繕義務を負わない旨が新たに定められ、以下の但書が追加されました。
↓
賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
ただし、賃借人の責めに帰す事由によって、その修繕が必要となった時はこの限りではない。
【修繕義務と賃借人による修繕】
賃貸人の修繕義務は次の場合に発生します。
①修繕の必要性(修繕しなければ賃借人が目的に従って使用収益できない)
②賃借人の帰責事由の不存在(賃借人の責めに帰すべき事由による物ではない)
よって、賃貸人の修繕義務の範囲を明確にしておくこと
賃借人が異常を発見したのち、それを放置していて状態が悪化するなど「賃借人の責任」も明確にしておく必要があります。
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【条文例】
賃借人は本物件の不具合を発見した時、速やかに賃貸人に通知するとともに、その後の修繕について賃貸人の指示に従わなければなりません。
この通知を怠り又は遅延したことによって、建物または付帯設備に損害を及ぼした時は賃貸人はその損害を賠償しなければなりません。
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後々の賃貸トラブルを避けるために、修繕などの費用負担、修繕権の行使条件や範囲、手続き等について、予め取り決めた内容を賃貸借契約書等に明文化しておくことが必要。
今回の民法改正によって賃借人による修繕の権限が明文化され、これによって賃貸トラブルになった際も明文に則り手続きを進めることが出来ます。
実務的にもとてもやりやすくなったのではないでしょうか。
更に詳しい内容は動画にてお話させて頂いておりますので是非ともご覧ください。