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賃貸物件の退去時に「原状回復」でトラブルにならないためには!?

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賃貸物件の退去時に「原状回復」でトラブルにならないためには!?

「原状回復」は、入居者が賃貸物件を退去する際に、賃貸物件を入居前の状態に戻すことを指します。

しかし、原状回復をめぐるトラブルが起こることもあります。

今回の記事では、原状回復ににまつわるトラブルにならないようにするためのポイントをまとめました。


<目次>
原状回復にまつわるトラブル
 原状回復とは
 原状回復でよくあるトラブル
 原状回復の費用は誰の負担か
 原状回復はいくらくらいかかるか
国土交通省が定めるガイドライン
 ガイドラインの位置付け
 トラブルを未然に防止するために
 ガイドラインのポイント
国民生活センターから消費者への注意喚起
原状回復をめぐる起こりがちなトラブル
原状回復でトラブルにならなためのポイント
 ①契約時の確認
 ②入居者と良好な関係を築いている
 ③通常から管理を怠らない
 ④管理会社任せにしすぎない
 ⑤自主管理だけにしない
まとめ


原状回復にまつわるトラブル


原状回復とは

賃貸物件の原状回復とは、住んでいた部屋を住み始める前の状態に戻すことを指します。

次の入居者のために、入居者には本来の状態に回復させる義務が課せられます。

ただし、原状回復の費用の負担は必ずしも入居者だけの責任ではなく、通常損耗や経年劣化による傷や汚れについては、一般的に入居者には費用を負担する責任がありません。


この事は、国土交通省がガイドラインに定めています。

▶︎「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(国土交通省)


ガイドラインでは「原状回復」では以下のように定義されています。

<原状回復の定義>

原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること


原状回復でよくあるトラブル

原状回復でよくあるトラブルには、大家さんと入居者の間に起こるものが多いです。

特に、住居者にとっては経年劣化によるものだと捉えていても、大家さんから見たら入居者の不注意や扱い方からの傷や汚れだと判断する、といった関係で起こるトラブルが多いでしょう。

後ほどの項目で詳しく解説します。


原状回復の費用は誰の負担か

時間の経過による劣化(経年劣化)や、通常の利用により起こった傷や汚れ(通常損耗)については、原則として入居者に原状回復の責任はないとされています。

普通に住んで一般的な掃除をしている限り、壁紙や床材の張り替え、ボードの取り替え、クリーニング等を借主が行うことは不要です。


一方、原状回復で入居者側が対応しなければならないものは、「故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損の復旧」です。

基本的には、わざと、またはうっかり壊してしまったもの等が原状回復の対象となります。

掃除を疎かにして発生したカビや汚れ、喫煙によるヤニ汚れ、飼っているペットがつけた傷やシミなど、入居者の故意によって生じた傷・汚れについては、入居者に修繕費用負担が求められるケースが多いでしょう。


また、家賃の滞納や故意・過失による損傷がなければ、敷金は返還します。


2020年4月1日の民法改正によって、敷金と原状回復についてのルールが明文化されています。

原状回復の費用は誰が負担すべきか、どちらが負担するのかということは、この国土交通省が定めるガイドラインに細かく定めてあるので、まずはそのガイドラインを参照にする必要があります。

賃貸借契約の内容によっては、物件によって上記のような原則にあてはまらない「特約」が記載されていることもあります。

契約書には、退去清掃料やクリーニング費、水回り消毒料など、具体的な金額が明記されている必要があり、契約時の細かな内容が、原状回復の費用の負担がどちらになるかを決定するので、大家さんと入居者の双方共に、契約する際に原状回復の内容をきちんと理解しておくことが重要です。


原状回復はいくらくらいかかるか

入居者が負担するべき原状回復費用が敷金より多ければ差額を請求され、反対に少なければ残金が返金されます。

ここに、原状回復にかかる費用の相場を例として挙げてみましょう。


原状回復費用の相場①ハウスクリーニング費用

部屋が広くなるほどハウスクリーニング費用は高額になります。

以下は平均的なクリーニング費用です。

・ワンルーム、1K:15,000~30,000円

・1DK、1LDK:20,000~40,000円

・2DK、2LDK:30,000~50,000円

・3DK、3LDK:50,000~80,000円

・4DK、4LDK:70,000円~


原状回復費用の相場②壁や天井のクロスの張り替え

壁紙や天井のボードの張り替えの相場は、1LDKでおおよそ30,000円〜50,000円です。

・一部が汚れたり傷ついたりしていても、通常広範囲で張り替えが行われるケースがほとんどです。

・タバコのヤニ汚れなどは、壁も天井も全面的に張り替える事がほとんどです。

・壁紙だけでなく下地のボードにまで傷や損傷がある場合は、ボードの張り替え工事費用も修繕費用に加わります。


原状回復費用の相場③フローリングや畳の張り替え

床の張り替え相場は広さにより、また材質にもよるので一概には言えませんが、フローリングの張り替えにかかる費用は「作業費+材料費+交通費」となり、賃貸物件の場合は10万円前後が相場です。

家具を置いて生じた床のへこみは通常損耗とみなされる場合が多いですが、家電や家具の移動時についてしまった傷は入居者が費用を負担する事が多いでしょう。


国土交通省が定めるガイドライン

2020年4月に民法が改正され、入居者側に落ち度がない部分について、原状回復義務を負う必要がないことが明文化されました。

【改正民法621条】(賃借人の原状回復義務)
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年の変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない

この事を受け、国土交通省からも「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が提示されました。

以下の3つの項目は、国土交通省の公式サイトに記載されている、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を転記した解説になります。


ガイドラインの位置付け

民間賃貸住宅における賃貸借契約は、いわゆる契約自由の原則により、貸す側と借りる側の双方の合意に基づいて行われるものですが、退去時において、貸した側と借りた側のどちらの負担で原状回復を行うことが妥当なのかについてトラブルが発生することがあります。

こうした退去時における原状回復をめぐるトラブルの未然防止のため、賃貸住宅標準契約書の考え方、裁判例及び取引の実務等を考慮のうえ、原状回復の費用負担のあり方について、妥当と考えられる一般的な基準をガイドラインとして平成10年3月に取りまとめたものであり、平成16年2月及び平成23年8月には、裁判事例及びQ&Aの追加などの改訂を行っています。


<利用にあたって>

⑴このガイドラインは、賃料が市場家賃程度の民間賃貸住宅を想定しています。

⑵このガイドラインは、賃貸借契約締結時において参考にしていただくものです。

現在、既に賃貸借契約を締結されている方は、一応、現在の契約書が有効なものと考えられますので、契約内容に沿った取扱いが原則ですが、契約書の条文があいまいな場合や、契約締結時に何らかの問題があるような場合は、このガイドラインを参考にしながら話し合いをして下さい。


トラブルを未然に防止するために

原状回復の問題は、賃貸借契約の「出口」すなわち退去時の問題と捉えられがちですが、これを「入口」すなわち入居時の問題と捉え、入退去時における損耗等の有無など物件の状況をよく確認しておくことや、契約締結時において、原状回復などの契約条件を当事者双方がよく確認し、納得したうえで契約を締結するなどの対策を的確にとることが、トラブルを未然に防止するためには有効であると考えられます。


ガイドラインのポイント

⑴原状回復とは

原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。

⑵「通常の使用」とは

「通常の使用」の一般的定義は困難であるため、具体的な事例を次のように区分して、賃貸人と賃借人の負担の考え方を明確にしました。(以下の図参照)

<図 損耗・毀損事例の区分>

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より ⑶経過年数の考慮

(2)で解説しているBやA(+B)の場合であっても、経年変化や通常損耗が含まれており、賃借人はその分を賃料として支払っていますので、賃借人が修繕費用の全てを負担することとなると、契約当事者間の費用配分の合理性を欠くなどの問題があるため、賃借人の負担については、建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させる考え方を採用しています。

⑷施工単位

原状回復は毀損部分の復旧ですから、可能な限り毀損部分に限定し、その補修工事は出来るだけ最低限度の施工単位を基本としていますが、毀損部分と補修を要する部分とにギャップ(色あわせ、模様あわせなどが必要なとき)がある場合の取扱いについて、一定の判断を示しています。


国民生活センターから消費者への注意喚起

国民生活センターからも、原状回復のトラブルについては、注意喚起の案内が公表されています。

▼国人生活センターより:参考記事(クリック)


国民生活センターには、賃貸住宅に関する消費生活相談が毎年3万件以上寄せられており、そのうち、原状回復に関する相談件数は毎年1万3,000~4,000件程度で、賃貸住宅に関する相談のうち約4割を占めています。

上記のサイトではあくまでも、入居者の立場から見たトラブルの事例が掲載されており、このようなトラブルが起こった場合、どのような対処を取るべきかというアドバイスを、消費者(入居者)向けに紹介されています。

以下のような啓発資料も国民生活センターからは発行されています。

このような資料が発行される背景に、いかにトラブルが起こりがちかと言う事が伺えます。


  • ▼国民生活センターより
  • 『住み始める時から、「いつか出ていく時」に備えておこう! 
  • 賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意』

 

国民生活センターによる情報や、上記のような注意換気は、同時に賃貸管理会社や大家さんにとっても起こっていると言う事ができるため、起こりがちなトラブルにどのようなものがあるかの参考になるでしょう。


原状回復をめぐる起こりがちなトラブル

それでは、以下に賃貸管理会社や大家さんの立場から見た、起こりがちなトラブルの事例を挙げますので、参考にしてください。


事例①:敷金ではまかないきれない修繕費に、原状回復費用を請求されたら、「敷金を払ってあるのに」と支払いを拒否された。

事例②:敷金礼金不要の物件に対し、エアコン清掃代やクリーニング代を請求したら、支払いを拒否された。

事例③:明らかに入居者による汚れや傷であるため、修繕費や清掃代を請求したら、これは経年劣化だと言いきり支払いを拒否された。

事例④:修繕費がかかり、敷金の払い戻しはないことを説明したら、こんなに修繕費がかかるのが納得できないから、敷金を払い戻して欲しいと要求された。

事例⑤:長年のペットによる匂いのために、クリーニングや壁紙の張り替えに費用がかかることを説明したら、匂いはしないと言い張り、クリーニング代の請求に応じてくれなかった。


賃貸借契約は長期間にわたることが多く、原状回復が問題となる退去時は、契約締結時から相当の時間が経過しているケースがほとんどです。

そのため、入居時の状況がわかるような記録が残っていない場合に、問題となっている損傷等が通常損耗や経年変化にあたるかどうかの判断が難しいことがあります。

原状回復に関するトラブルの多くは、退去時にオーナー側から提示された修繕の範囲や金額について借主が納得できないときに起きるものです。

原状回復に関する借主と貸主の費用分担については、それぞれの契約内容や賃貸住宅の状況などによって異なるため、トラブルになりやすいという特徴があります。


原状回復でトラブルにならないためのポイント


①契約時の確認

賃貸契約の内容や退去費用について疑問が生じたときに確認するだけでは遅く、この内容は、大家さんと入居者の双方で、契約時に確認されるべきとなります。

退去時の確認より、入居時の契約内容の確認の方が何倍も重要になります。

また、

・書面で契約内容を残し保管する

・IT重説で動画で記録を残す

・自主管理だけにせず管理会社が契約の確認を行う

などが必要です。


②入居者と良好な関係を築いている

日頃より、入居者の要望に応えるよう努めたり、物件と大家さんの自宅が近ければ挨拶を交わす、物件の見回りを適度に行うなど、入居者との良い関係が築かれていれば、心情的にも退去時のトラブルというのは起りにくくなるものです。

入居中の、入居者との良好な関係性は、退去時のトラブル回避のみならず様々な面で重要となります。


③通常から管理を怠らない

管理を放置していれば、いつの間にか入居者が契約とは違う事を行なってしまっていることもあります。

・いつの間にかペットを飼っている

・許可なくリフォームをしていた

・入居者が日常の掃除やメンテナンスをしておらず汚部屋になっていた

などがないよう、管理会社に任せていたとしても、入居者の状態は気に掛けるべきでしょう。


④管理会社任せにしすぎない

管理会社に任せていたとしても、定期的な入居者の入居状況の確認をすることは必要です。


⑤自主管理だけにしない

自主管理をしている場合もあるでしょうが、第三者の関わりがない場合に、どうしてもトラブルは起こりやすくなり、また実際にトラブルが起こってしまった場合に、トラブルが大きく発展しやすくなります。

良い管理会社に物件を任せられることは、トラブルを回避するために重要です。


まとめ

今回の記事では、原状回復ににまつわるトラブル防止のためのポイントをまとめました。

原状回復をめぐるトラブルは、賃貸物件にまつわるトラブルの中ではトップに上がります。

今回の記事を参考にして、原状回復にまつわるトラブル回避ができるよう、オーナー様へのアドバイスや、日頃の管理にお役立てください。


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